約5年半ぶりの“特別なところ”への帰還となったが、
心の内にはうれしさと心配が同居していた。
その不安をかき消すためには、結果を出すしかないーー。
決意を胸にプレーし続けたことで再確認できた想いもあった。
このクラブの新たな歴史を作るために、
そして多くの人と喜びを分かちあうために、
永井謙佑は自慢のスピードでチームを牽引する。
インタビュー・文=INSIDE GRAMPUS編集部
今回は完全移籍で復帰を果たした7月11日以降のことを振り返っていただきたいと思います。約5年半ぶりにグランパスの選手としてシーズンを闘ってみていかがでしたか?
永井 「やっぱり名古屋が好きだったんだなあ」と感じています。約半年ですが、グランパスでプレーしてみて改めてそう感じました。それはチームに対してもそうだし、街もそう。豊田スタジアムの雰囲気など、僕にとって特別なところなんだなと思いましたね。
加入時の会見ではさまざまな想いを口にしていました。移籍前後の気持ちの変化はいかがでしたか?
永井 率直に言えば、グランパスじゃなかったら移籍していなかったと思います。仮にほかのクラブだったら、わからないことだらけで、余計なストレスも溜まりますからね。僕の場合、プロ選手としてデビューしたのがグランパスでしたし、6年間名古屋に住んでいたので街のことも十分にわかっています。妻も一緒に暮らした経験があるので土地勘があるので、移籍して加入するまでのイメージはできていました。だから移籍を決断してからはすんなりと気持ちの切り替えができたのかなと思います。
グランパスからオファーを受けた時はどんな心境だったですか?
永井 全くの予想外でしたね。本当にびっくりしました。まさかグランパスからオファーをいただけるとは思ってもいなかったので。でも、驚きと同時にうれしさも込み上げてきました。
うれしい気持ちもありつつ、いろいろと悩んだ部分もあったと。
永井 人生で一番と言えるくらい悩みましたね。ご飯もうまく喉を通らず、体重が2、3キロ減って。そんなの初めての経験だったので、妻から心配されるくらいでした。僕だけの問題ではなく、家族もいますからね。本当に悩みました。
その中で移籍の決め手になったのは?
永井 やはりグランパスだったということ。そして、FWとしての僕に期待してくれたこと。その2つが大きかったですね。
復帰が発表されたあとのファミリーの反応、期待感をどのように受け止めていましたか?
永井 やはり6年前のJ2降格時にほかのクラブへ移籍したので、良くは思われていないだろうなと思っていました。だからこそ、結果を出して認めてもらうしかない。そう覚悟を決めていました。
それは加入会見の際にも話していましたが、その言葉どおり復帰してすぐにファミリーの信頼を勝ち取ったように感じました。
永井 復帰後ホーム初先発となった浦和(レッズ)戦(J1第24節)で1点目と2点目でアシストできて、3点目の僕のゴールがVARの判定待ちになった時に、ファミリーの皆さんからいろいろな声を掛けていただいたんです。それが本当にうれしかった。あの瞬間、グランパスの一員としてなにも臆することなく、思いきってプレーすることができると確信しました。スタジアム全体で雰囲気を作ってもらったおかげです。
「早く結果を出さなければ」という思いが強かった中でチームを勝利に導くを活躍でした。
永井 本当に「早く点を取らなければ」という気持ちが強かったです。復帰して最初の試合(J1北海道コンサドーレ札幌戦)で、後半アディショナルタイムに追いつかれて勝点3を逃してしまいました。次の浦和戦を落としたら順位が下がって、残留争いに巻きこまれるかもしれないという状況で、そうなるとこれからもっと厳しくなると感じていました。だからこそ、しっかりと勝点3を取らなければいけない試合でした。
浦和戦のゴールはチームにとっても、永井選手にとっても大きなゴールになりました。スタジアムの雰囲気はいかがでしたか?
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