1ゴール、2アシスト。自身の成績に満足はしていない。
それでも、「納得のいくシーズン」と言いきることができるのは、
“今の自分”を全力で表現しようとし続けた自負があるからだ。
存在価値を再確認し、選手として進むべき道は定まった。
新たな姿を示すため、森下龍矢はただひたすらに前へと突き進む。
インタビュー・文=INSIDE GRAMPUS編集部
2022シーズンは森下選手にとってどのような1年になりましたか?
森下 悔いのない1年というか、納得のいくシーズンになったと感じています。もちろん、結果を見るともっとできたと思いますけど、「全試合、120パーセントでプレーする」という僕の生き様のようなものは表現できたのかなと。そういう意味で、納得のいくシーズンという言い方をしました。
長谷川健太監督を迎えて新シーズンに臨みました。個人としてどのようなテーマを掲げていましたか?
森下 テーマは毎年同じですよ。120パーセントの自分を表現する。ピッチで自分を思いきり表現することが、サッカーをしている意味でもあるので。
新監督の下、グランパスのサッカーは大きく変わりました。
森下 2021シーズンから変わったのは、前線から積極的にプレッシャーを掛けるようになったこと。もう一つはファストブレイクとも言いますけど、ボールを奪ってからより速く攻めるということです。これらが今シーズンから新たに取り入れたことになります。
新たなチームスタイルは、開幕後すぐに表現することができたと感じますか?
森下 すぐに表現することはできなかったと思いますけど、そういったスタイルを目指し続けることはできていたと感じますね。
序盤戦は連勝がなく、なかなか波に乗ることができませんでした。選手としてどのように感じていましたか?
森下 いいゲームをして「波に乗れそうだ」と思っても、どうしても次の試合に勝てませんでした。どの試合も必死に闘っていたし、なにが原因なのかわからないんですけど……勝利したことによる慢心がどこかにあったのかもしれません。
とはいえ、慢心があっても勝てる試合もあれば、どれだけ集中していても負けてしまう試合もあります。結果がついてこない状況でも、チームには「継続していこう」というポジティブな雰囲気があったのでしょうか?
森下 そうですね。結果が出ていなくてもとにかく前向きに、というか。負けた試合のあとでも、健太さんは「次だよ」という声掛けをしてくれていたこともあり、選手は下を向くことなく闘えていたと思います。ただ、自分が意識している外というか、潜在的な意識の中で1勝したことにどこか安堵してしまっていたんじゃないかなと。僕自身、そう考えていた時期もありました。
それは「勝たなければいけない」、「結果で示さなければいけない」というプレッシャーを感じていたからなのでしょうか?
森下 そうだと思います。2021シーズンは5位で、2020シーズンは3位に入り、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)出場権をつかんでいました。グランパスはいわゆる“勝つサッカー”をしていて、そこに名将の健太さんを迎え、本気でチャンピオンを狙おうと。選手はもちろん、ファミリーの皆さんの期待が大きかった分、勝てないことによるプレッシャーを感じていましたね。
そのプレッシャーを跳ねのけるには、やはり試合に勝つしかなかったのでしょうか?
森下 そうですね。ピッチの上での悔しい思い、歯がゆい思いというのは、ピッチ上でしか返せない。オフの日にリフレッシュしたからといって、試合で感じたモヤモヤというのは消えないんですよ。だからこそ、1勝した時のうれしさは大きいんです。今思えば、プレッシャーからの解放がどこかで安堵、慢心につながってしまったのかもしれません。
仮にそうだったとして、どのようにチームはいい方向に向かっていったのでしょうか?
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