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佐藤寿人「皆さんと過ごした2年間は本当に幸せでした」

2612月

ー19日にジェフユナイテッド千葉への完全移籍が発表されました。

本当に大きなチャレンジです。僕が広島からグランパスへの移籍に挑戦したことと同じぐらい、もしかしたらそれ以上に大変な道のりになるかもしれません。ただ、「ピッチの上で結果を出す」という選手としての想い、「結果を出すために最善を尽くす」という考えに変わりはありませんから、これまでと同様にしっかりとやっていきたいですね。千葉には僕にとって一番の理解者である兄(勇人)がいます。兄と一緒にJ1の舞台に戻れるように頑張りたいですね。また、千葉での戦いの中で瑞穂と豊田に戻ってきて、皆さんに挨拶ができれば幸せです。それも一つの目標にやっていきたいと思います。


ーグランパスから移籍することが決まった時の心境を教えてください。

広島を離れた時と同じですよ。「また新たなチャレンジが始まる」という想いとともに、やはり寂しい気持ちがありました。でも正直、広島を離れる時と違って、「今回は泣かないだろうな」と思っていました。広島での在籍期間に比べればグランパスで過ごした時間は短かったですから。それなのに、新幹線の中で公式HPに掲載されるコメントを書いている時は涙が止まらなくて。「グランパスで過ごした2年間は濃いものだったんだ」と改めて思いましたね。本当に素晴らしい仲間たちとサッカーができたことは自分にとって大きな財産だと思います。


ーグランパスではキャプテンとしてチームを一つにまとめました。

J2に降格したタイミングという一番苦しい状況の中、「1年でJ1に戻さなければいけない」という想いを持ってグランパスに来たものの、順調にJ1復帰を手にしたわけではありません。結果が出ない時にはキャプテンとして先頭に立ち、厳しい声に耳を傾ける必要がありました。でも、それはグランパスを愛しているからこそ出る言葉ですから、それを受け止めて良くしていくしかありません。ただ、移籍1年目ということもあり、自分の中で築き上げてきたキャプテンのイメージでチームを引っ張っていくわけではなかったので、また違った難しさがあったのも事実です。正直、ナラさん(楢﨑正剛)がキャプテンをやってくれたほうが気は楽だったと思います(笑)。でも、ナラさんやタマさん(玉田圭司)、(小林)裕紀がいろいろな形で支えてくれて、「なんとかキャプテンが務まったのかな」という印象ですね。


ー試合後にゴール裏を盛り上げる姿は印象的でした。

これまでそういうキャラクターではなかったので大変でしたよ(笑)。広島では盛り上げ役の選手たちがいて、僕はそこに呼ばれて参加するという感じでしたから。2017年は選手が大幅に入れ替わり、試合後にファン・サポーターと盛り上がるような雰囲気ができあがっていませんでした。でも、僕が多少の無理をすれば、他の選手もそういう雰囲気に入ってきやすいんじゃないかなと思ったんです。今では試合後の雰囲気をはじめ、スタジアムに来てくれた人たちの顔を見て声援に応えたりする選手が多くなったように感じます。そういう意味ではキャプテンとしてやるべきことができたのかなとも思いますね。もちろん、もっとピッチの上で仕事をしたかったというのが正直なところですけどね。


ーファン・サポーターは、「キャプテンとしてチームをまとめて引っ張ってくれた」と思っています。

そう思っていただけることはうれしいです。しかし、僕は「ストライカーとしてゴールを奪う」という役割を担ってきていたので、グランパスでもそういう仕事を全うしたかったんですけど、なかなかゴール前で結果を残すことができず、個人的にはもどかしさを感じていました。でも、それ以上にチームとして残さなければならない結果を残すことができたことが重要です。今年に関しては、J1に残らなければ2017年に復帰を手にした意味がないと思っていたので。J1という舞台でグランパスとお別れできるというのは自分にとっても良かったことなのかなと思います。


ークラブとして大事にする“一体感”を作る手助けができた2年間だったのではないでしょうか?

プレー面だけでなく、ピッチ外においても皆さんからの期待を感じていました。でも、それは結果を出してこそのものだと思うので、自分としては歯がゆかったというか、難しさを感じるところがありましたね。それでも「誰がどう思おうが関係ない」という考えもありました。試合に出ていようが出ていまいが、自分の行動でクラブが良くなるのであればいいなと。とにかく、勝った時はみんなで喜ぶ。負けた時は一番前でファン・サポーターの声に耳を傾けてそれを受け止める。勝っても負けても一緒に戦うことが大事ですからね。なかなか試合に出ることができないという経験ができたことも含めて、やるべきことができたとは思います。常に試合に出続けていた頃とは違った形でキャプテンをやらせてもらって、ピッチの内外でいろいろなことを学ばせてもらいました。


ー事業サイドの取り組みに協力する機会がすごく多かったように思います。

スタジアムに人を集めてこそ、プロサッカークラブです。そこに対する取り組みで、このクラブのポテンシャルを示すことができたと思います。その中でチームが魅力的なサッカーを見せ、もっと結果が伴ってくるといいですよね。グランパスが大きな可能性を秘めているのは間違いないと思います。そこにつながる部分での取り組みや働き掛けというのは、僕が経験してきたもの以上のことをやってきていたと感じています。


ー事業サイドの働きを見て「勉強になった」と語っていました。

あれだけのお客さんを集めるというのは大変だと思いますよ。会社の中で目標数値を上げて、いろいろなことに取り組む。そして多くのトライをして修正して次につなげていく。サッカーと似たような考え方が会社にはあったと思います。すごく勉強になりましたね。


ー今後、グランパスに期待していることは?

クラブの規模を考えれば、毎年優勝争いをしていく必要があると思います。グランパスにはそれだけのポテンシャルがあると思いますから。そこにつながるような種をもっともっと蒔いていってほしいですね。チームとして結果が出れば、必ずいいサイクルで回るようになり、いろいろなことが好転していくはずです。クラブとしてブレずに前に進んでほしいと思います。


ー最後にファン・サポーターにメッセージをお願いします。

2年間で大きなものをいただいたと思っています。僕はまだ選手として戦い続けるので、瑞穂や豊田で皆さんと会える日を楽しみにしています。ブーイングの対象であった選手が、グランパスに来たことで拍手の対象となる仲間としてプレーする機会をいただきました。それがまたブーイングの対象に戻ってしまうとは思うんですけど、2年間一緒に戦った仲間として、できれば拍手で迎えてくれたらうれしいですね(笑)。皆さんと戦った2年間は本当に幸せな時間でした。僕はグランパスを離れますけど、来季もグランパスで戦う選手たちの背中を押してあげてください。ファン・サポーターの存在が僕ら選手を前に進めてくれますから、これからも変わらずグランパスを愛し、サポートし続けてほしいなと思います。2年間お世話になりました。ありがとうございました。