マッシモ フィッカデンティ監督
ー12月1日の公開練習時に欠席していた丸山祐市選手と、練習に復帰していた山﨑凌吾選手の状態を教えてください。
まず、丸山はなにか問題があるという状態ではありません。山﨑に関しては、前回お話させていただいた時と同じで、間に合うか間に合わないかというような状態です。それは私だけで決めるのではなくドクターやトレーナーと話し合いながら、彼自身が痛みをどう感じているかだと思います。
ー次節対戦する柏レイソルについて、カウンターに警戒すべきと選手たちが言っていました。監督はどんなところに相手の強みを感じていますか?
柏の特長はまさにそこだと思います。オルンガ選手とクリスティアーノ選手のスピードと、それを生かせる江坂(任)選手が少し後ろから2人を操るという構図で、特にカウンターにおいて強烈なパワーがあると感じています。それをどれだけやらせないか。そして我々の攻撃の仕方として、スピードと技術がある前線の特長、言い方を変えるならば今はそれを生かさざるを得ない状況ですので、その相性は決して悪くないのではないかと思っています。そういう選手を嫌がるようなDF陣だと思いますので、どちらがしっかりと守って、自分たちの強みを出しきるかというやり合いになると思います。
ーカウンターの対策としては、変なボールの失い方をしないこと、守備の準備を常にしておくなどがあると思います。監督はどのように考えていますか?
我々は点を取られないで、とにかく守ることだけを考えるような試合をやりたいわけではありません。どうしても、マイボールで点を取りに行く作業をしている時には、相手を広げるために自分たちの距離を空けるのでスペースができてしまいます。ただ、そこで奪われたら、というケアをする考えを常に持ちながら、もちろん今おっしゃられたように変な失い方をしないように、常にバランスを取ることは最大限気を付けなければいけないと思います。これだけオルンガ選手が点を取っていて、どのチームも柏と対戦する時には警戒しているはずです。それでもペースを落とさずに点を取り続けていることを考えると、本当にそういった能力が優れていると思いますので、どうすれば抑えられるという選手ではないと思いますので、その可能性をなるべく小さくするというふうにやるしかないかなと。チーム全体がそういった感覚を持ちながら、個で抑えるのではなくてチームで抑えるという中では、(前節の)大分トリニータ戦は決して簡単な試合ではなくすごく難しい試合でした。その中でもチームとして闘うという部分を最後まで捨てずに、全員がチームのために、今日はこういう流れだからと受け入れて、チームのために走ることを最後までやりきってくれました。それはチームという単位でしっかりと残っていると思いますので、そのチーム力が今度は勝ちにつながるようにできたらと思います。
ースピードや技術を生かした攻撃の中で、求めていきたいフィニッシュの形はどんなものですか?
技術が生かされるという点では、グラウンドのどの部分でも個人の技術は反映されます。例えば崩してクロスを上げて中に何人かが飛び込んで、という形で崩すところでワンツーを使ったり、個人の1対1の駆け引きがあったりします。ただそれよりもそのプレーが最後のシュートにつながるような、ワンツーで突破したらGKと1対1になったり、チームとしてサイドで1対1の状況を作り出した上で、あとは個人技で突破するというような、個人技の次に来るプレーがラストパスやクロスではなくてシュートになる。そういうシーンを作っていく必要があるかなと思います。
ーパスをつなぎ、とらえどころのないサッカーをする上で、リスク管理という面ではどういうところに気を付けるように指示していますか?
どの瞬間もボールを失わないということをやっていかなくてはいけません。それが自陣のゴールに近いほど、そのリスクは避けなければいけないと常に選手たちに話していますし、逆に相手ゴールに近づけば近づくほど、リスクを伴うプレーの選択をしていいと伝えています。それが基準になる以外は、どんな形でプレーするからどういう失い方は、というのはないですね。逆に言うと今どういう形でボールを動かさなければいけないか、リスクを伴ってでも狙いを持ってやっていかなきゃいけないかというところで。柏と対戦するということで相手の特長や、奪われてカウンターを受けるという部分についての質問しかいただいていないですけど、我々も自分たちの強さを発揮して勝つ準備をしています。みなさんはそこを心配をしてくださっていると思いますが、準備のベースではどう失わないように攻撃をしようという準備の仕方はしないと思います。点を取るためにボールを動かそうという準備をしていますので、そういう方向性で物事を捉えています。そして、FWがいない中でポジションを変えながら、つかみどころのないという言い方を以前しましたが、それがいい形で出ている部分があると思います。選手たち自身は「FWがいれば」というような考え方よりも、このサッカーにやりがいを感じてくれていますし、今シーズンも残りわずかで、このサッカーの質をもっともっと上げて、より良いものにするという捉え方をしてくれているのが練習から見えています。今は結果がなによりもですけど、そういった部分でも選手たちの貪欲さを感じますので、そういう方向性で取り組んでいます。
ー山﨑選手が復帰した場合、今のサッカーに組み込むのでしょうか? それとも以前のような戦い方にするのでしょうか?
ケガ明けの選手なので、どういった試合展開だから使える状態なのか。それに試合の流れや山﨑の回復具合や当日の状態などすべてが判断の材料になって、彼がプレーするかどうかが決まります。常に言っているように出場している選手の特長をなるべく生かされる形でプレーさせるのが私の役割だと思っていますので、彼が出たら前の形に戻す、というよりも彼が生きる形をしっかりと作っていく必要があるかなと。試合状況によって彼が出場した瞬間にどういうプレーをチームとしてやるべきかです。選択肢は前のやり方か今のやり方かというような少ないものではありません。そういった意味で選択肢を持てるのはすごくいいことだと思っています。大分戦ではしっかりとゴール前を固めておけば、放り込んでなにかをするということは今のグランパスはできないだろうという考えも大分にはあったと思います。そういう試合の進め方や試合の状況によってそうなった時に、選択肢を持った上で試合に挑めるということは大きいです。もちろん状態によってはスタートから出ることもあるでしょうし、途中から出場することもあるでしょうし、出ないかもしれません。そういう部分を含めてギリギリまで見ていきたいと思います。
ー今シーズンは同じチームに2度負けていません。残りの3試合は前回対戦時に敗れた相手とのリベンジになります。前回対戦なども踏まえながら、どのように落とし込んでいきたいですか?
サッカーに興味がある方に向けて、皆さんがいろいろな記事を書いてくださっていることで我々とサポーターの皆さんがつながれていると思います。ですから「そんな質問を今しないでくれ」と思うことにも私には答える義務があると思います。それになによりも質問をしてくださる皆さんとの関係をいいものにしたいので「そんなことを聞かないでくれ」とは言いたくないです。ただ、私がどういったデータを気にするか、得点や失点、得失点差、それが順位を競う上で私が唯一気にしているデータだということは線引きしてあります。このタイミングで「これからの3試合は前半戦で負けている相手との戦いですがどうですか?」という質問をいただいた時に、例えば一つの答え方としては「FC東京とはアウェイで負けましたが、ホームでは勝てたので、アウェイで敗れた相手とホームで対戦する時には勝てるのではないか」というのも一つの答えです(笑)。鹿島にはホームで負けましたけど、アウェイでは勝てたというのもありますので、その角度からの質問に対して、私が現場監督として答えることが、どういった方向でファンの方に伝わっていくのかなと。皆さんはチームのことや私のことをなによりも思ってくださっているので、「東京にはアウェイで負けましたけど、ホームで勝ったので、残り3試合も同じような結果になるに決まっていますよね?」という話で、私は「イエス」と答えればいいだけの質問ということでよろしいでしょうか(笑)? 結局、目の前の試合でしっかり勝つために常に全力でやっていますので、そういった直接対決は一番いいデータになりますので、そういうところも踏まえて、より警戒心を強めて勝つために全力でやります。
ー失礼しました。2度負けてないということで、うまく修正できているのではないかという意図でした。
やはり怒った返しをしないで正解でした(笑)。この質問をポジティブに捉えて良かったです。自分が思っていたような関係をあなたと築けているということがわかりました。
ーFC東京を指揮していた2015年の4位が監督の日本での最高の順位です。それを超えていきたいというような気持ちや、当時の上位争いから学んだことはありますか?
たしかそのシーズンは勝ち点では3位と同じで、得失点差で4位になってしまった記憶があります。1stステージと2ndステージがあったシーズンですよね。話題を振っていただいたのでしっかりと答えますけども、そういった順位でしたけど、悔やまれるのは一番点を取れる、重要な選手の一人であった武藤(嘉紀)選手がシーズンの途中に移籍してしまったことです。それによって最後に勝ち点を取り切れなかったかなという残念な記憶があるシーズンですね。
東京の時にそういった結果が出たのが就任して2年目で、1年間しっかりと東京でやって迎えた年でした。グランパスでは昨年はとにかく残留するという目標だけに向かって、チーム全員でやっていました。もちろんその中で練習の仕方など、いくつか今年にも残るベースがあって、今年の頭からまったくゼロからのスタートだったわけではありません。ただ、今年はやり方をガラッと変えて、どういうサッカーをやっていくかというところや、サッカーに対しての考え方やメンタルの部分、チームとしてどうあるべきか、チームの一員としてどう振る舞うべきかなどいろいろなことに手を付けてきました。選手のためにも言ってあげたいのですが、今年の頭からやり方がガラッと変わった中で初めての試みだった選手もいますし、やり方に慣れていかないといけませんでした。今年は第1節から第2節の間が空いたので、スタートからという言い方が相応しいかはわかりませんが、その中でもシーズンの第1節、第2節、第3節といった頭の頃から、順位としていいポジションにいます。それをしっかりとやり続けてこれていることは、ここ何年かのグランパスの流れから考えた時に、成績だけを見ても「グランパスは今年は違ったポジションにいるな」と。ただそれは「名古屋がこんなところにいるの?」ではなく「やっといるべき場所にいる」と見られたいですし、選手たちにもそういった意地や誇りを持ってもらいたいです。この順位にいることということをただただ喜んでいるような状態ではいけません。もちろん自分たちで勝ち取ったというところでは達成感を感じてもらいたいですけど、これが当たり前になる、最低限になる、常に優勝を争う、もっと上に行かなければいけないんだという感覚を持たなければいけません。最初からずっと言い続けながらやっていたうえでこういう取り組みをできています。
この1年はほかのチームにとっても、サッカー界以外やほかの仕事をされている方にとっても本当に難しく、いろいろなことが考えられた1年でした。その中でも我々が集中して作業できたという背景には、多くの方々に支えられているということがあります。ありふれた言葉になってしまうかもしれませんが、それはサポーターの力もありますし、スポンサーの方でもありますし、全部を挙げることはできませんが、そういった方々に対しての想いをプレーで表現するということを結果に出せていないチームもありますが、サッカー界全体が取り組んでいると思います。その部分を最後まで大事に、残り3試合をどう捉えるかという部分でもそれをかなり強調しながら、クラブと私自身、そして選手たちに、もうひと踏ん張りしなければいけない理由があるだろうということで、選手たちにさらに頑張る力を引き出そうとやっています。比較の対象として順位の話を出していただいたと思うんですけども、同じような順位にいながら違った取り組み方をしていると思います。今後さらにもっともっと上に行かなければいけないですし、ここで満足してはいけない結果だと思っています。