かつて優れた“戦術眼”を生かしてグランパスを支えた理論派が、
現在は明確な“ビジョン”を持ってチームの組織化を図っている。
「サポーターにはサッカーが楽しみであってほしい」
すべては根底に抱えるこの想いを実現するために——。
インタビュー・文=INSIDE GRAMPUS編集部
―現在はグランパスのチーム統括部スポーツダイレクターという肩書きを持っています。まずは、その役割について教えてください。
大森 トップとアカデミー双方がつながりを持って、チームを一つにするということです。また、チーム統括部には当然、「チームを作っていく」というミッションがあります。1年、2年、3年先のあるべき姿を見据えつつ、5年先やその先の未来も含めて、チームを作っていかなくてはいけません。明確なビジョンを持った上で、選手の補強や組織の一体化を進めています。
―現役時代に所属していたクラブに、チーム統括部という役割で戻ってきました。どのような思いを抱いてグランパスに帰ってきたのでしょうか?
大森 私が現役時代に感じていたのは、自分たちに「スタイルがない」ということ。当時は監督が代わると、すべてが変わっていました。私の根底には、「サポーターにはサッカーが楽しみであってほしい」という思いがあります。チーム統括部という立場でこのクラブに戻ってきたからには、「週末にグランパスの試合があるから、平日の仕事や学校も頑張れる」と思ってもらえる状況を作りたかった。そこで、お客さんにスタジアムへ来てもらうにはどうしたらいいかと考えた時、「自分たちがイニシアチブを持って、魅力的なサッカーをする」必要があると感じました。だからこそ、風間さんに監督を引き受けてもらったんです。サポーターの方々に、サッカーを通して、グランパスを通して、1週間ワクワクしてもらう。そういうものを提供したいという思いが私の根底にあるんです。
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