昨季トップチームの練習に参加した高校2年生に対し、
技術力は申し分ないものの、どこか頼りないという印象を受けた。
しかし、クラブユース選手権の得点王に輝いた倍井謙は、
自分のスキルを存分に発揮する“自信”を手に入れていた。
聡明な頭脳と抜群な才覚を備える貴公子が、変貌を遂げているーー。
インタビュー・文=INSIDE GRAMPUS編集部
名古屋グランパスU-18が日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会で優勝しました。改めて現在の心境を聞かせてください。
倍井 今シーズンの最初から、チームとして“頂点を取ること”を目標に決めていました。正直、クラブユース東海大会で3位決定戦に回るという、苦しい時もありました。だけど、逆にそれがよりチームを引き締めるきっかけになったと思います。チャレンジャーという意気込みを持って、思い切って大会に挑めました。また、試合を重ねるごとに成長できた。それが優勝の要因だと思います。
倍井選手はどのような意識を持ってこの大会に臨みましたか?
倍井 1年生の時にはクラブユースに行っていなくて、2年生の時も試合にちょっと出るぐらいで悔しい思いをした大会でした。3年生になると責任感が芽生えたこともあり、この大会に対して強い意気込みを持っていましたね。なんとしてでも優勝して、自分の価値を上げたかった。そういう意味では前向きに捉えられる結果を得られたと思います。
チームとしては最初から優勝を目標に掲げていたんですね。
倍井 そうですね。去年も同様に優勝を目標に据えていましたけど、実現できませんでした。だからこそ、今年はとにかく“頂点を取る”という目標を決めて、そこに向けて取り組んできたんです。まずここで、一つ達成できて良かったです。
今大会に入る前、プレミアリーグでは1試合未消化で4位という順位でした。
倍井 プレミアリーグの開幕戦で負けたのは良くないスタートになりました。その他にも、アディショナルタイムに失点して引き分けてしまうというもったいない試合も何度かありました。僕は1試合出ていないんですけど、そこから3試合は全部勝とうとチームで話して、やっと優勝が見える位置まで来ることができたので、そこは前向きに捉えています。
大会前から個人的な手応えを感じていましたか? クラブユースが始まる前に、出場停止となった試合を除いて3試合連続でゴールを決めていました。
倍井 今シーズンに入ってプレミアリーグ(高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ WEST)では自分の思うようなプレーがあまりできていなくて、得点も少なかったのですが、クラブユース東海大会に入ってからはだんだんと自分の力を出せるようになりました。今に至るきっかけになったのは、東海大会の最後の試合、3位決定戦のジュビロ磐田戦です。あそこで吹っ切れたというか、自分の特長をしっかり出せるようになってきました。
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