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【小西工己社長連載】グランパスとともに世界へ(第2回)

109月

2017年4月の社長就任以降、小西は「世界に通じるクラブにする」という想いの下、グランパスの陣頭指揮を執ってきた。

クラブ経営の内側に迫るべく、『INSIDE GRAMPUS』では、連載企画として小西のインタビューを敢行。

第2回では、クラブ経営のビジョンの根底を成す「プロダクトアウト」と「マーケットイン」をテーマに聞いた。




グランパスの社長に就任する以前は、トヨタ自動車の常務役員として活躍されました。マーケティングの観点から、どのようなクラブ経営、チーム作りを考えて取り組んできましたか?


小西 マーケティングでは「プロダクトアウト」と「マーケットイン」という考えがあります。プロダクトアウトは、作り手の発想で商品開発などを行うこと。「こうあるべきだ、世の中をこう変えたい、そのためにはこれが必要だ」というような、組織のビジョンにも影響するところです。いわゆる“理想の姿”というか、私たちがまだ経験してもいないようなところに向かって実行していくことですね。私は「今の非常識を常識にする将来」を作りたいと思っていて、今は「何だそれ?」と言われるような、見たことも聞いたこともない、あり得ないだろうということも、未来では当たり前になるものだと考えています。未来で当たり前にするための作業、つまりこれが練習とか訓練、鍛錬ということになります。


例として挙げられるのが、1997年に発売したプリウスのエピソードです。トヨタの内山田竹志会長が、チーフエンジニアをやっていた時代、COP3(第3回気候変動枠組条約締約国会議)、いわゆる京都議定書が採択された年でしたかね。そういう環境、時代の中で、トヨタには「G21」という21世紀に向けたプロジェクトがありました。それは「画期的な燃費の車を出す」というコンセプトで、本当にアメイジングなプロジェクトでしたよ。具体的には、燃費を50%程度上げようとするもの。リッター10キロを15キロにするって、すごいことですよね。しかし、内山田さんは「何だよ、50%って中途半端な数字を出しよって。それじゃ足りないだろ」と当時の上司から言われたんです。結局、求められたのは2倍。頑として譲ってくれなかったそうです。「21世紀を目指すのに、なぜ50%までしか見ていないんだ」と。実は、その前に30%までの燃費向上という目処は立っていたんです。30%の向上はすごいことですよ。でも今思えば、それはやはり現状の技術の延長でしかないんです。50%、ましてや2倍となると、今の技術とはまったく別物でなくては達成できない。ぶっ飛んだ考え方を持たないとやっていけないんです。そのくらいにならないと、イノベーションというのは起こらないですから。周りが何と言うかは関係なく、絶対的に大事だということを考えて実行していくことが重要なんです。自分たちでクリエイトすること、それがまさにプロダクトアウトですね。

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