スクールに加入したのが小学校低学年。以来、アカデミーでたくましく成長し、トップ昇格後も紆余曲折を糧にして日本代表にまでのぼり詰めた。そして今年1月、新天地ベルギーへ。生粋のグランパス・チルドレンが、名古屋から世界へと羽ばたく。
インタビュー・文=INSIDE GRAMPUS編集部
ベルギーでの生活が始まりましたが、順調ですか?
藤井 いや、いろいろ大変です。さっきもトラブルに遭ったばかりで(笑)。クラブから車を貸してもらって運転したんですけど、まず左ハンドルの右車線走行が怖すぎて。それでも運転はなんとか大丈夫だったんですけど、駐車場から出る時に、僕のクレジットカードが使えないことに気付いて。チームのマネージャーに連絡してもつながらず、通りすがりの現地のオジさんに片言の英語で事情を説明したら、その人がクレジットカードで払ってくれて、僕が現金を手渡すというやりとりに20分ほど費やしました(苦笑)。あとですね、ベルギーに向かう飛行機の中でもハプニングがあって(笑)。CAさんにコーラを注文して飲んだら、「いくらになります」みたいなことを言われて。僕は機内サービスだと思っていたんですよ。その時は全く現金を持っていなくて困っていたところ、隣に座っていたオジさんが、「じゃあ、俺が払ってあげるよ」みたいな感じで支払ってくれました。見ず知らずの親切な人たちに助けられながら生きています(苦笑)。
現地では英語でコミュニケーションを取っているのですか?
藤井 全部英語ですね。英語を学ぶ本を読んだり、TikTokやYouTubeの英語学習の動画を観たり、ドラマを英語で観るようにして毎日勉強しているんですが、マジで大変です。
通訳は?
藤井 いないんですよ。だから正直、チームミーティングで話していることが理解できていなくて(苦笑)。ボードとマグネットを使って戦術的な説明を受けている時はなんとか大丈夫なんですけど、それ以外はわかっていないことが多いですね。監督やスタッフと直接話す時はある程度ゆっくりしゃべってくれるのでわかるんですけど、ミーティングだと普通のスピードで話すので、聞き取るのが難しいです。
チームメイトとのコミュニケーションは?
藤井 それも基本、英語ですね。チームに合流早々、アニメや漫画が大好きな選手が話題を振ってきてくれて、めっちゃしゃべった気になるんですけど、実は全然しゃべっていないという(笑)。ただただ知っている登場人物の名前を挙げて、「イエーイ」とハイタッチするみたいな(笑)。すっごい薄い会話なんですけど、僕は勝手にその選手と仲良くなれた気になっています(笑)。
それでも、そういった積み重ねが大事なんでしょうね。
藤井 実際にチームに合流してみて本当にそう感じています。チームメイトたちは僕に英語で話しかけてくれるんですが、みんなはオランダ語やドイツ語、フランス語で話しているので、チームメイト同士でどんな内容の話をしているのか、本当にわからないんです。
改めて、移籍について聞かせてください。ベルギー1部のKVコルトレイクからオファーを受けた時の気持ちはいかがでした?
藤井 今年1月10日に移籍が正式発表されてから出発までドタバタと準備して、すぐにこっちに来たという感じなので、あまり考える暇もなかったですね。思えば、2021年のリーグ戦でもチアゴ(アヴァイFC)が負傷して、慌てて前半から途中出場しましたし、日本代表に初選出された時も追加招集でとりあえず荷物をまとめて出発、という感じでしたし、なんかドタバタがつきものの人生なのかもしれません(苦笑)。今は「開き直ってやるしかないな」という気持ちです。ここがまた自分のスタート地点だとも思っているので、日本でやってきたことを信じてプレーで示していくしかないですね。もう必死にひたむきに頑張りたいと思っています。
(残り: 7110文字 / 全文: 8697文字)