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2021JリーグYBCルヴァンカップ 決勝 C大阪戦後 監督会見

3010月
10月30日(土)、2021JリーグYBCルヴァンカップ決勝が行われました。名古屋グランパスは埼玉スタジアム2002でセレッソ大阪と対戦し、2-0で勝利。試合終了後、マッシモ フィッカデンティ監督がオンラインでの会見に臨みました。

マッシモ フィッカデンティ監督


試合の内容よりも、まず試合を終わって勝ったということから話をしたいと思います。グランパスにとって唯一足りなかったルヴァンカップのタイトル、カップをしっかりと勝ち取ったということで、まず国内で獲得できるすべてのトロフィーを獲得したこととなりました。それはグランパスもこだわっていた部分なのですごくうれしく思います。今日、そういうゲームで勝ちきった選手たちがこの1年間、2年間と言ってもいいと思いますが、サッカーをするために、本当にいろいろなものを我慢して犠牲を払ってきました。「勝って報われる」ということも話しましたが、そのようになって本当に良かったと思います。勝たなければそういう部分はクローズアップされませんが、勝った上で、あの状況でも頑張ったと言われることがこの国の流れだと思います。彼らのためにも、こういう結果になって本当に良かったと思います。

 

(今日の試合は)時間ごとにいろいろな姿を見せる、戦術的にお互いに攻めあったり潰しあったり、やりあったり、オープンな展開になったりしてすごくいいゲームでした。優勝した我々、グランパスのファミリーの皆さんに「おめでとう」と言いたいと思います。サッカーファンという括りでは、今日はセレッソ大阪のサポーターも多く会場に来てくださり、すばらしい雰囲気を対戦相手ながら作ってくれたと感じています。セレッソ大阪というチームには若く将来性を感じる選手が多く、すばらしいサッカーをし、本当に難しいゲームになったと対戦相手として言えます。それだけのサッカーを彼らはやっていましたし、未来を考えてもいろいろなことにつながるいいゲームを両方のチームでできたのではないでしょうか。

 

通常なら試合後の会見では戦術的な部分や技術的な部分、今日はどう闘ったかということに触れる機会が多いのですが、今日はあえて順番を逆にして、まず言うべきことを先に話させていただきました。最後にサッカーの監督としてどういう試合だったかもコメントしなければいけないと思います。今日はどういう試合だったかと言えば時間帯によって違い、我々が最初の20分くらいで主導権を握っていたと思いますし、得点が入ってもおかしくない形も作っていましたが、前半の中盤から終わりまではすごく相手に押し込まれて苦しい時間帯が続きました。その流れを変えるためにどうしようとハーフタイムに準備をしたのと、後半の得点が入った時間帯がすごく良く、そこからお互いにオープンな時間が続きましたが、我々が2点目を決めてからはやるべき戦いができ、勝ってしかるべき戦い方ができたと思います。

 

―天皇杯でセレッソ大阪に敗れてから中2日での再戦となりました。短い期間でしたが、選手にはどのような修正点を伝えたのでしょうか?

まずは我々の状況を現実的に見ようと。(日程を)言い訳にしようと思えばできますが、最近の試合の結果が好ましくないことに選手が現在、どのような状況でサッカーをしているのか。誰にも失礼なことを言いたくありませんが、(どのような状況で)サッカーをやらされているかという状況を考えると、隔離生活が20日間ある中で大事な試合が続き、どうやって試合を落としてしまったのか。ファイナルまで進出しているルヴァンカップにどうしても頭が少しいっていたのかもしれません。苦しい生活、通常の状態でもメンタルのコントロールが厳しい中で、(ファイナルが)何日後かに待っている状態でリーグ戦も天皇杯も大事な試合でしたし、それぞれ一つひとつに集中しようと選手たちも自分たちのコントロールをしていましたが、難しかったのかもしれません。ただ、天皇杯で見せた選手たちの姿は、私の知り合いとは思いたくない、一緒にやってきた選手とは思いたくないと。「お前たちはこんなものではない」と強い言葉も使い、彼らをかき立てるようなこともし、自分たちの力を信じる、そういう角度から選手にアプローチしたことで、今日は彼らが持っているものをしっかりと出してくれたと思います。

 

―今日の試合、押し込んだり押し込まれたり、オープンな展開になった時間帯もあったと思いますが、戦術的にどのような狙いがあったのでしょうか?

お互いのチーム状況がどういうもので今日の試合が行われるか。直前に天皇杯でも直接対戦していて、おそらくセレッソ大阪は多くの選手を入れ替えてくるだろうと。私自身はグランパスのどの選手がプレーするか、天皇杯の時からある程度イメージがありました。疲労の部分では試合の中盤から後半にかけ、もしその先(延長戦)も続くなら不利になるということは想像していました。走ることが徐々にできなくなってきた時にどうスペースを埋めるかを一番気にかけてやりたかったのですが、今シーズン中盤でほぼレギュラーとして出ていた米本(拓司)を起用できない状態で、長澤(和輝)もACLで韓国に到着したあとに発熱があり10日間ほど実戦ができない状態があり、あまり長く起用できないかもしれないというクエスチョンがつく状態での起用となりました。そこで選手を代え、システムも変えながら、試合の入りは4-4-2でそこから4-2-3-1、そして4-3-3とし、4人で後ろが耐えられなくなってきてからは5-4-1、最後は5-3-2とそれぞれの変更の意図を選手たちが理解してプレーしてくれました。その時間その時間で相手が少し上回りそうになった時に戦術の変更を加えながらこの試合を乗りきる、それがこの試合の闘い方でした。

 

―後半は戦術的にも監督の采配がすばらしかったと思いますが、前半は少しがっかりもしました。チームとしてあの戦い方は予定どおりだったのでしょうか?

どの時間帯に相手になにをされてしまったか、こちらの状況も含めなにができていたかの読み合いということも含め、前半の良かった時間帯に、一番大きなチャンスは前田(直輝)がゴール前でコントロールがあと少し良ければというシーンでしたが、あそこで得点が入っていれば相手になにもさせない、こちらがしっかり走ることで主導権を握ろうという展開に前半から持っていくことができたと思います。あそこで決めきれなかったことで相手に自信を与えてしまいました。前半の45分をあのペースで走りきることは無理でしたし、少し落ちたことで相手に押し込まれてしまいました。後半はまた修正して(その意図を)選手が理解してくれて、結果的に試合をとおしてということでは、狙っていたことをやりきってくれたのではないでしょうか。

 

―後半は、セットプレーで先制しカウンターから追加点を挙げました。システム変更もはまり、意図どおりの戦いができたのではないでしょうか?

準備の段階で、グラウンドでの選手の配置よりも、相手の特徴に対してなにをさせてはいけないかという決まり事を作っていました。こういう流れになればこう、こうなればこう、なぜならこうだからという決まりを選手たちがうまくつなぎ合わせてグラウンドで表現してくれました。あとは、言われたような形で実際に得点を取ったこともありましたし、リードされてしまっては相手のやり方に対して合わせなければいけなくなりますが、今日はリードしたことで自分たちの望む展開にできたと思います。

 

―フィッカデンティ監督自身、日本へ来て約8年が経ち、これまで苦しい時期もあったと思います。今日、初めてのタイトル獲得を達成した気持ちと日本への愛情、なぜ日本で監督を続けてきたかをお聞かせください。

どういう形で自分の日本への愛情を表現するかというより、実際にどう行動してきたのか。もう8年間日本でずっと仕事をしているということは自分の人生の選択としてやったことです。セリエA(イタリア)の同僚監督の中には、私が日本へ行くと知った時に、どうかしてしまったのかと思った人もいたと思います。ですが私自身は一切後悔していませんし、振り返った時に間違った選択をしたと思ったこともありません。こういう結果を出せたことはもちろんですが、日本で仕事をすると決めた時に、私の仕事として規律を重んじる、皆に協調性があり、私がどういうサッカーをやりたいかということが、私のイメージしていた日本人の国民性や性格が絶対に私に合うと感じたので、それを信じてやってきました。最初はFC東京でリーグ優勝をできる可能性があるところまでいきましたし、グランパスへ来てもチームを再建するという目標から、昨年はACL出場を決めるところまで来ました。すべては言えませんが、いろいろな結果を出せました。ほかのチームでも降格の可能性があるところからの再建、そこから抜け出すチーム作りをできたという手応えもあります。愛情がなければ、そういう結果は出せなかったと思います。

 

―後半、試合が進むにつれてベンチの選手も盛り上がっている雰囲気でした。監督として試合を見ながら、どのような感情だったのでしょうか?

自分のメンタル状態としてどうだったかといえば、いつもどおりすべての状況をしっかり把握できていると自覚がありました。90分間そういう状態だったと思います。今日は、選手に声を掛けて気持ちを盛り上げるということはほかの人がやってくれていたので、どう試合を進めるか、どう勝ちきるかということに神経を集中でき、いつもどおり、すごくいい精神状態で最後まで闘うことができました。少し疲れを感じているとしたら、それは隔離生活のせいで疲れているところがありますが(笑)、それ以外は試合が始まってから終わるまで集中していい形で闘うことができました。

 

―2019年の残留決定時にはサポーターからブーイングを受けるなど、多くの苦難を乗り越えてのタイトル獲得になったと思います。ここまでを振り返って一番辛かったことは?

質問の意図はわかりますし、そういう部分を気に掛けている方、今後、そのような記事を読んで知りたい方もいると思いますが、今このような世の中でサッカーをさせてもらっていることへの感謝が、私にも選手にも一番最初にあります。隔離生活、犠牲を払ってということも話しましたが、それは選手たちが通常のサッカーに取り組める状態ではない中でファイナルに出て、これだけのことをやっているということを絶対に忘れないでもらいたいという位置づけで言っています。一般的に見て、サッカーをしていていいのかを気にしている選手もいますし、世の中の状況が良くなってきたと言われる状況でも、これだけのお客さんが入る状況で試合をしてもいいのかと考える選手もいると思います。そのような中で取り組んできてという部分で乗り越えてきた、辛かったという角度からしか触れたくないです。どれが一番辛かったということに対して、それを受け入れるではなく、跳ね返す、それを受け入れて乗り越える。我々はプロとしてサッカーを続けていくということをサッカー界全体で取り組んでいますので、「辛い」という言葉で終わらせたくありません。

 

―2年間、選手を鼓舞し続け今日のタイトルに辿り着いたと思いますが、チームの現在地と未来についてどうお考えでしょうか?

未来の話をする時は、ある意味で、何を話してもいいと思います。ただ、私が仕事として未来を話す時は、現状がこうだから未来はこうありたいということです。2年前に私が名古屋へ来た時に、2年後にこういう結果をと言うことはできたかもしれませんし、そこから1年でいい状態となり次はタイトルをと言うこともできたかもしれません。未来の話となると何でも言えるのですが、実際に現状を語ると、いろいろな大会で、天皇杯は準々決勝、ACLでもよいところまでいき、ルヴァンカップで優勝し、リーグでもまだ来シーズンのACL出場を争う4位という位置にいます。たまたまでは出せない結果を出せていると思いますし、この取り組み方を続けることでいい方向へ進むと思っています。そういうことでしか未来については話せません。私は監督としての仕事をグランパスのためにやっています。色々な役割を持った人がクラブにいますし、色々な判断をそれぞれがするものなので、私が軽率に未来の話をすることはふさわしくないと思います。今日は喜ぶことに集中したいと思います。