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【選手会プロデュース企画鼎談】長谷川アーリアジャスール×太田宏介×吉村一彦(マーケティング部MDグループ)

59月

クラブがSDGs(持続可能な開発目標)の活動に取り組む中、選手会としてもSDGsを踏まえた商品を開発したいという想いから「エコバッグ」をプロデュース。クラブとして初めてとなる選手会プロデュースのオフィシャル商品制作について、企画発起人の長谷川アーリアジャスール、太田宏介、グッズ制作を担当する吉村一彦(マーケティング部MDグループ)に話を聞いた。

 

インタビュー・文=INSIDE GRAMPUS編集部

 

ーこの企画を実施することになった経緯や意図を教えてください。

吉村 5月頃に「選手会からなにかを発信したい」とアーリア選手から打診されたことでこの企画が動き出しました。話し合いを進める中で、皆さんに喜んでいただけて、今の環境の中で求められているものを選手会がプロデュースして作ろうと決まりました。最初は「コロナ禍で必要なもの」としてさまざまな意見がありましたが、ちょうどレジ袋の有料化が始まるタイミングでもあったので、エコバッグを作ることになりました。


長谷川 僕たちとしては、世界的に苦しい状況を迎えている中で「ファミリーの方々に喜んでもらいたい、クラブを助けたい」という想いと共に、「医療従事者の方々の力になりたい」という想いがありました。なので、このエコバッグの売上の半分を愛知県内の医療従事者に寄付します。最初に吉村さんに相談したのは僕でしたが、宏介くんと「グッズを作れたらいいね」という話をしていました。宏介くんはFC東京在籍時にグッズの制作をやったことがあると聞いていたので、どう進めればいいかアドバイスをもらってから、吉村さんに相談しました。そこからは吉村さんと広報の方も交え、オンライン会議システムを使って話し合いをしました。


太田 僕はFC東京の選手会として定期的にグッズを販売して、ファン・サポーターの方々に喜んでもらい、それをクラブに還元するということを経験していました。グランパスでは過去にそういったことをしたことがないと聞いていましたし、この苦しい状況の中でなにか手助けできることがないかとアーリアと話をする中で浮かんだ案でした。


ーグランパスでは選手会がプロデュースした商品を発売することがなかった中で、選手からそういった企画の相談を受けていかがでしたか?

吉村 比較的おとなしい選手が多いクラブだったこともあり、今まではそういった企画をできていませんでした。(佐藤)寿人さん(現ジェフユナイテッド市原・千葉)からも「(サンフレッチェ)広島で選手発信の企画をやってみんなに喜んでもらっていた」という話を聞いていたので、我々としてもやりたいという思いを持っていました。その中で今回、お話をもらったことがきっかけで実現できたので感謝しています。


ーエコバッグの制作が決まってからはどのような話し合いをされましたか?

吉村 エコバッグと言っても、使われ方や生地、大きさなどさまざまな選択肢があったので、マーケットリサーチから一緒にやらせてもらいました。アーリア選手は実際に家で使っているエコバッグのサイズを測ってきてくれましたね。実際に使った時にどういうものが喜ばれるのか、素材はなにが良くて、どんな色やデザインがいいのか。本当に一から商品企画を一緒にやらせてもらいました。エコバッグと言うと普通の商品に感じると思いますが、寸法からデザインまで、世の中にない新しい型で作っているのが特長の一つです。


ー商品企画を一からやってみていかがでしたか?

太田 僕はグッズ制作の経験がありましたが、今回は今までにない状況の中でした。ただ、「自分たちでグッズを企画し、発売して良かった」ではなくて、いろいろな方への想いがこもっているからこそ、時間も掛かりましたし、みんなでアイデアを出しあって今回の発売に至りました。皆さんの手元に届いてみないと実感は湧きませんが、こういう自分たちの意図をファミリーの皆さんに共感していただける部分があると思います。選手やスタッフだけでなく、グランパスファミリーみんなで医療従事者の方への感謝の想いと、これからもみんなで立ち向かっていくという一つのアクション、きっかけになればいいなと思っています。


長谷川 僕も(横浜F・)マリノス在籍時に一度だけやったことがありました。その時はファン・サポーターの方々に喜んでいただけましたが、宏介くんが言ったようにその時とは状況が違うので比べることはできません。今は皆さんが練習場に来ることはできないですし、試合でもさまざまな制限があって、少し距離ができてしまっていると感じていました。物でつながるというのは少し違うかもしれませんが、僕たちが抱く想いでつながることができればチームにとってもいいことです。また、グランパスで過去にやっていなかった新たな取り組みであることも含め、すごく良かったと思います。


ー細かいところまでこだわって作ったという話がありました。お2人がこだわったポイントは?

長谷川 めちゃくちゃこだわりましたよ(笑)。


太田 僕は寸法に関してはみんなに丸投げしてしまいました(笑)。アーリアもいろいろ調べて、とてもこだわってやっていましたよ。


長谷川 グッズを制作するにあたって、まずはどこをターゲットにするかが重要だと考えていました。例えば、主婦層に向けたものだったら大きめで保冷機能がついていたり、カゴ型にしたほうが使いやすいのか、と。一人暮らしの方だったらコンビニのお弁当が入るように下にマチがついていたほうが良さそうだよね、とか。スタジアムに観戦に来る前にたくさん買い物をする場合はどのくらいの大きさが必要なのかなど、いろいろなことを想定しました。


太田 練習場に来られるようになった時にサインを書きやすい生地にするとかね。


長谷川 そうだね。あとはグランパスくんのポーチをつけて、キーホルダーとしてつけられるようにしたら忘れないようになるとか。キーホルダーを使わない場合はグランパスのロゴが見えるように小さく収納できるように、とかね。


太田 挙げたらキリがないくらい。


長谷川 本当にキリがないくらい考えたね。


吉村 あとは値段ですね(笑)。


長谷川 そうそう(笑)。吉村さんに1000円程度にしてほしいとお願いしました。いいエコバッグはそれなりに値段がしますし、安いものは300円とかでも売っていますよね。でも、今回はより多くの方にいいものを届けたかったので、価格を抑えたいとリクエストしました。


吉村 値段を考えなければいろいろなアイデアを取り入れて作れますが、まずはみんなが買いやすい価格にすることを重視しました。それを目指しつつ、先ほど挙がったようなアイデアをなるべく多く取り入れるようにする。なかなか大変でしたね(笑)。


長谷川 それを叶えてくれたので感謝しています。


太田 アーリアは質感について特にこだわりを発揮していたよね(笑)。


長谷川 うん(笑)。生地が薄くて使っているうちに壊れてしまうものが多いので、生地の厚さもそうですし、縫い方までこだわりました。市販のエコバッグの縫い目の部分を引っ張って、どういうものが耐久性があるのか、調べたりもしましたよ。


吉村 エコバッグのサンプルを何個も集めて、耐久性や耐水性、シワのつきにくさなどいろいろリサーチしました。そういったリサーチをした結果、生地が厚くてしっかりしているものにできあがりました。


ー太田選手が特にこだわったポイントは?

太田 最後に文字を入れようとなった時に、ただの選手会プロデュースのエコバッグではなくて、グランパスらしさを表した言葉を入れたいという話でまとまりました。その中でいくつか候補があったんですが、最終的に満場一致で僕が言った「ーAll for NAGOYAー」に決まりました。


長谷川 僕はロッソ(イタリア語で赤色)・ジャッロ(イタリア語で黄色)を出したんだけど……(笑)。


吉村 商品名に採用させていただきましたよ(笑)。


長谷川 ほかにも「We are Family」とかステイホーム企画のロゴを入れる案とかも出ましたね。その中でも宏介くんがボソッと言った、「ーAll for NAGOYAー」に決まりました。


太田 これを手に取ってくれる人たちに名古屋という街、クラブに誇りを持ってもらえるような、短いけどメッセージ性のある言葉だと思います。エコバッグ自体もグランパスカラーなので、グランパスを愛する皆さんにこれを持ってスタジアムに来ていただきたいですね。


ー最近では、普段使いできるようにさりげなくクラブロゴの入っているような商品のニーズが高まってきていると思います。

吉村 そうですね。グランパスではグランパス感が強い商品のほうが人気なのでそういった商品に注力しています。ただ、アーリア選手の身近の方からも「さり気なく入っているものもほしい」という声が上がっている話も聞きましたし、そういうニーズがあるのは間違いありません。今回のエコバッグはグランパスカラーですが、パッと見ではロゴもエンブレムも入っていません。“わかる人にはわかる”というギリギリのラインを攻める商品に今まで取り組めていなかったので、そういったところでもヒントをもらいながら商品化できたのは大きなことだと思います。僕らの幅も広がるので本当にありがたかったです。


長谷川 ほかのクラブもそうですが、「ロゴやエンブレムを押し出した商品が多いね」と宏介くんと話していました。もちろんそういったものが喜ばれるのもわかっていますし、クラブを感じてもらえるものなので欠かせません。ただ、あえてそこを抑えることでいろいろな幅の人が使えるようになるとイメージしていたので、「さりげなくグランパス感が入っているようなデザインがいいよね」と話していました。


ー今回のグッズ制作はいかがでしたか?

太田 とても楽しみながらできました。手に取ってくれる方が喜んでくれることは、クラブや僕らにとっても幸せなことですし、それが医療従事者の方々のためにもなる。みんなが幸せな気分になれるのでいいなと思いました。それは皆さんの手に届いた時にもっと実感できると思いますが、今でも満足感を得られています。


長谷川 普通にシーズンが進んでいたら、ここまで話をする機会もなくてできなかったかもしれません。世界的に苦しい状況が続いていますが、だからこそ気付いたこともあります。今後の考え方が変わっていく、いいきっかけになっていくのかなと思います。


太田 サッカーを長い間やってきて、当たり前のように週末に試合があって、大観衆の中でプレーできていました。でも新型コロナウイルスの影響で、それが当たり前じゃないと痛感しました。サッカー選手は試合があってピッチで活躍する姿を見せられなければ、社会に対してなにもできない。そういった無力さみたいなものをとても感じました。その中で、いつも応援してくださるファミリーの皆さんや最前線で闘ってくれている医療従事者の方々に対してなにかできることを考えて、行動を起こせたことはすごく良かったなと思います。今後、これが主流になって、選手発案のグッズやSNSでの企画など、もっと選手が関わっていくようなことが増えていけばいいなと思います。そういう行動を起こすことで「みんなで闘っているんだ」、「ファミリーなんだ」と見せられると思うので今回限りにはしたくないですね。


長谷川 間違いないね。こういうことをすることによって、よりクラブとのつながりは強くなるはずですから。


ー完成品は手に取りましたか?

長谷川 まだ実際に発売されるものは手元にないですが、最終のサンプル品を使っています。とても良く仕上がっていますよ。


太田 僕はまだサンプルも受け取れていないのですが、アーリアから自慢されましたよ(笑)。


長谷川 実際に自分で使って試してみないとダメだからね。使いやすいですし、使い終わったらコンパクトにできて邪魔にならないのでいいですよ。グランパスくんのポーチにしまってバッグとかにつけてもかわいいし。かなりいいものができあがったと思います。


太田 こだわって作ったものができあがってうれしいよね。ロゴもしっかり入っていて24時間グランパスを感じるから最高だね(笑)。


吉村 いろいろなマーケットリサーチをする中で、今回のようなありそうでないものを作り出すことは難しいと感じていました。「今までなかったけど、あったらいいな」と感じていたものが今回できたと思うので、とても良かったですね。


長谷川 商品の評価は皆さんがすることですけど、より多くの方に買っていただけたらうれしいです。また、これを買っていただくことで医療従事者の方々やクラブのためになるので、少しでも力になれたらいいですね。


太田 みんながハッピーになれるいいサイクルだよね。


ー最後にファミリーの方々へメッセージをお願いします。

吉村 日頃からグッズを通じてサポートしていただいて感謝しています。今後も選手と力を合わせながらグッズを制作していきたいと思っています。これからも皆さんに喜んでいただけるものを作っていきますので、引き続きよろしくお願いいたします。


太田 このエコバッグを手にした方々に喜んでもらえたらうれしいです。また、レジ袋を減らすことが地球環境を良くすることにもつながるので、ぜひ使ってもらえたらなと思います。今回は選手会としてプロデュースしたグッズを発売することができたので、今後もこのような活動をしていきたいです。


長谷川 今回はたまたま僕たち2人が発起人という形になりましたが、選手全員が賛同してくれて、スタッフの方々も含めたみんなが一つになって実現できました。僕らみんなの想いを感じてもらって、皆さんに喜んでいただけたら僕たちも幸せです。また、それが今でも最前線で闘ってくれている医療従事者の方々やクラブの力になります。今回のようなグッズをとおした活動もそうですが、皆さんが一番期待していることはサッカーで元気を与えるプレーを見せること、結果を出すことだと思います。そこを忘れずにしっかり取り組んでいくので、これからも熱い応援、サポートをお願いします。