強い決意を抱いて訪れた名古屋の地で、
新たに得られたものは多かった。
起点となる縦パスの増加、プレーエリアの変化が、
プロ11年目での進化を裏付ける。
選手としてもう一つ、上のステージに立つためにーー。
グランパスの屋台骨を支える男が、
さらなる飛躍を遂げようとしている。
インタビュー・文=INSIDE GRAMPUS編集部
名古屋での1年目を終えました。自身にとって2019シーズンはどのような1年でしたか?
米本 非常に悔しいシーズンになりました。いいスタートを切れたにも関わらず、残留争いをすることになってしまいましたから。僕自身、ケガで離脱してしまったことを含め、悔しい気持ちが強いです。それでも、名古屋では初めて体験することが多くて、自分の中でいい経験となったのは間違いありません。
「うまくなりたい」という想いを抱いてグランパスへの移籍を決意しました。技術面における成長について、どのように評価していますか?
米本 うまくなったかどうかを判断するのは難しいですけど……試合の中でボールに触れる機会は確実に増えたと感じています。特にチームとして調子の良かった時期は、そう実感することが多かったですね。それだけに、J1残留を第一に目指すようになって以降、自分の中で葛藤があったのも事実です。内容よりも結果を求める状況では、手堅いサッカーをする必要があり、それによってボールを触る機会が減ってしまうわけですから。正直、そういった難しさはありました。
チームに合流して以降、技術力を向上させるために毎日のように自主練習をしていました。
米本 練習をしなければ、ほかの選手たちに追いつくことができないとわかっていたので。とにかくたくさんボールに触ることが大事だと考えていましたね。風間(八宏)さんの下で「止める」、「蹴る」の重要性を再確認できたことが自分にとって大きかったです。特に「止める」ですね。今までの僕にはなかった考え方に出会ったわけですから。ボールをしっかりと止められれば前を向くことができるし、いいパスも出せる。小学生の頃から何気なくやってきたことなんですけど、改めて基礎技術が大事なんだと痛感しました。
小さい頃に新しいものに出会ってワクワクしていた感覚に近いのでは?
米本 まさにそういう感覚ですね。だからこそ、もっと早く学んでいれば選手としての幅が広がっていたのかな、と思います。小さい頃からやっていれば、無意識にできるようになっていたんじゃないかって。そういう意味でも、自分にとってすごく刺激のある1年でした。
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