本日9月26日(木)、トヨタスポーツセンターで非公開トレーニングを実施。練習終了後、明治安田生命J1リーグ第27節のサンフレッチェ広島戦に向けて、マッシモ フィッカデンティ監督が記者会見を行いました。
マッシモ フィッカデンティ監督
―今週のテーマは最低限の決まりごとを確認することだったのでしょうか?
シーズン終了まで残り8試合で、次の試合までの時間がほとんどないという状況です。ですから、今週は優先順位をつけて作業してきました。その中で、コンセプトの共通理解がなければ次の作業に進めないので、それぞれの部分で線引きをしながら仕事を進めてきました。
―その作業は急ピッチで進めたのでしょうか?
この4日間はほとんどクラブハウスで生活していたのではないかと思うくらいに、選手と接する時間以外も仕事をしてきました。選手や皆さんは戦術を落とし込む作業にフォーカスしているかもしれません。しかし、選手たちにはそれよりも「広島にどう挑むのか」や「今後の運命を決定づけうる重要な試合だ」という気持ちの部分を重要視していると伝えました。自分はそう考えていると、皆さんにも伝えておきたいと思います。
―練習を通して、選手の判断基準を明確にしていた印象です。
人生も同じだと思うのですが、いろいろなことを知っていればいるほど、試合中に考えることは少なくなると思います。「この状況における答えはこれだ」とわかっていれば、判断は速くなりますから。知識の整理をしたと捉えていただければいいと思います。
―このチームにおける原理原則を整えたと。
一つひとつ「これが大事」、「あれが大事」というのではなく、すべてがそろってこそだと思っています。原則もありますけど、その背景には選手のクオリティーがあるので、このチームにふさわしい“名古屋仕様”を作っていきたいと思います。その上で、各試合への準備があります。広島戦で名古屋の選手たちの特長を最大限に出していくために、どう闘っていくべきかを整理したつもりです。
―実際に指導して、名古屋の選手たちの特長をどのように感じましたか?
まだスタートの段階です。監督として選手に接していく中で、それぞれのキャラクターが見えてくるものだと思っています。仕事がしやすい環境であることは間違いありません。全選手が協力的ですし、スタッフの協力体制も素晴らしいです。必要なサポートはすべてクラブが用意してくれています。
―練習で「名古屋の選手たちにはスピードがある」という話をされていたと思います。スピードが名古屋の特長だと捉えているのでしょうか?
スピードを生かして裏を狙うサッカーをするというわけではありません。ご覧になった瞬間に、そういったプレーの確認をしていただけだと思います。私はすべてのことができないといけないと考えています。より多くのことができるチームが、より勝利に近づけると考えているので。「自分のサッカーはこういうものだ」という線引きをするつもりはありません。
―選手の能力に関してはどのように感じましたか?
パーソナリティーのある選手、クオリティーのある選手がそろっていると思います。サッカーはグループで行うスポーツなので、技術力が高いと評価されている選手がチームプレーを考えること、より多くのことを吸収したいという想いを持つことがチームの成長につながると思います。その差は、選手個々がこれからサッカーで食べていけるかどうかにも関わっていきます。今週はそういった話も多く伝えてきたつもりです。
―選手と関わる上で大事にしていることはありますか?
フィジカルもメンタルも含めたあらゆる部分で「すべて出しきった」というところまでやり、「その後についてくる結果を受け入れよう」というのが私の考えです。もちろん、口で言うのは簡単で、実際の作業は簡単ではないですけどね。結果ももちろん大事ですが、それに左右されずに、攻撃の時も守備の時も全力でやり、ピッチから出る時に「出しきった」と言える闘いをすることを選手たちに求めています。先ほども言いましたが、「今週はここについて練習したから、それはしっかりやろう」という考えではなく、あらゆる部分の準備をした上で、「あとはやってこい」と選手を送り出したいと思っています。世界中のどのチームも勝つために毎週準備をして、グラウンドに立っています。勝つためにやれることは本当に多岐に渡ります。選手たちにも、勝つためになにができるかを現実的に、具体的に考えてもらいたいです。
―影響を受けたり、模範としている指導者はいるのでしょうか?
選手としても監督としても、長くイタリアサッカーに身を置いてきました。名前を挙げることはしませんが、素晴らしい選手や素晴らしい監督をたくさん見て、学びの多い日々を送ってきました。それぞれから多くを学んだ、という答えにとどめておきます。
―ほかの国にはない、イタリア人独自の考えやプライドはあるのでしょうか?
それは秘密にしたいと思います(笑)。イタリア代表として、またはクラブレベルでも、イタリアは多くのタイトルを手にしてきた国です。私はそういう世界から来ました。それを答えとしてもよろしいでしょうか(笑)。
―シーズン終盤の難しい状況で監督の任を引き受けました。改めて、現在の心境を教えてください。
名古屋はJリーグの中でも重要なクラブの一つだと思っています。そのクラブの監督を務めるということで、責任を感じながら仕事をしているところです。航海で例えるなら、このチームは今、荒波の中を進んでいるところだと思います。自分はその船長として、みんなの力を借りながら、この船をたどり着くべき港に連れていかなくてはならないと思っています。また、対戦相手として名古屋に来た時に、このクラブは多くのサポーターに強く支えられていて、ピッチ上の選手だけでなく、その後ろにも多くの敵がいるように感じました。そういったサポーターの方々に、「名古屋の側にいて、名古屋を応援してきて良かった」と思っていただけるような結果や気迫を見せたいと思います。全部を出しきって、皆さんに喜んでもらえるサッカーを表現したいですね。
―過去に指導した経験のある丸山祐市選手、太田宏介選手、米本拓司選手、吉田豊選手の存在が、コンセプトを浸透させる上で助けになっているのでは?
自分が要求していることを、彼らは過去に経験しています。ただ、彼ら4人に任せているわけではありませんよ。キャリアの中で、過去に指導した選手と別のクラブで再会することはこれまでにもありました。今回の場合は4人とも主力として位置づけていい選手で、彼らのおかげで作業がスムーズに進んだ側面はあると思います。今週は4バックのベースに時間を掛けました。その前に出る選手によって最適な形となるように、中盤4枚と前線2枚の形、中盤3枚と前線3枚の形など、バリエーションを用意しています。フォーメーションによってボールの動かし方を含めたすべてのやり方が変わってきます。「これをしたかったら、こういう理由でこういう形になるよね」というように、パターンごとに理由を説明しながらいろいろと準備をしてきたつもりです。
―練習では経験のある選手と伊藤洋輝選手や山田康太選手などの若い選手をミックスして起用することがありました。
彼らについては、プレーのイメージを多く持っていたわけではありませんでした。クオリティーはあるので、見方を変えながら、しっかりと育てていきたいと思っています。若い選手だけではなく、全選手に「次の試合は自分が出るという覚悟を持ってトレーニングしてくれ」と毎日繰り返し伝えています。質問に戻りますと、彼ら2人の位置付けは、若くてクオリティーのある選手ということになります。
―ジョー選手にはどのような期待を持っていますか?
彼が生きるためには、彼を生かすための状況をチームで作り出す必要があります。もちろん彼だけではなく、各選手の特長を一番生かせる状況を作る必要があるのですが。ジョーはチームの中でも重要な選手ですし、テクニックやフィジカルコンディションもすべて持ち合わせています。ただ、より高いレベルでプレーするためには、トレーニングを続けていく必要があると思います。
―太田選手は監督のことを“ミステル”と読んでいます。
イタリアでは監督のことをミステルと呼ぶのが一般的です。自分からそう呼ぶように伝えたわけではなく、おそらく彼がイタリアの文化を学んで、そう呼び始めたのではないでしょうか。FC東京時代から、彼はそう呼んでくれますよ。
―今節対戦する広島の特長をどのように分析していますか?
データに出ている通り、失点の少ないチームです。ボールを奪ったあとのスピードも特長の一つですね。可能な限り広島を分析し、注意すべき部分をピックアップしました。今週のトレーニングでその部分を落とし込み、選手と確認しながら準備をしています。
※以上の監督会見の動画は会員さまのみご覧いただけます。
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