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【Talk×Talk】コーヒー(稲垣祥)

209月

選手が好きなこと、ハマっていること、おすすめしたいもの……あらゆるジャンルの中から一つのテーマに絞って語る『Talk×Talk』。第2回目は稲垣祥選手がコーヒーについて語り尽くしてくれました。コーヒーの魅力、自家焙煎、初心者におすすめのコーヒーなど、気になるあれこれを教えてくれました。


インタビュー・文=INSIDE GRAMPUS編集部


今回はコーヒーについて語っていただきます。

稲垣 コーヒーのことなら任せてください(笑)。


少し前にSNSで「自家焙煎始めました」という投稿を見ました。最近のコーヒーライフはいかがですか?

稲垣 もうご覧のとおりですよ(笑)。毎日飲むものなので日常です。


では、まずはその自家焙煎について教えてください。

稲垣 焙煎はコーヒー豆を火に掛ける工程のことです。コーヒー豆と聞いて想像するのは黒いものだと思うけど、それは焙煎後の豆で、焙煎前の豆は緑っぽい、白っぽい色をしているんです。それを火に掛けると水分が抜けて黒くなっていきます。これがまた奥深くて、火までの高さ、回し方、焙煎度合いによって味が全く違うものになるので、とても重要な工程なんです。豆を火に掛けていると、水分が抜けるパチンという音が鳴り始めて、パチ、パチと鳴り始めたら1ハゼ、次にピチ、ピチと鳴り始めたら2ハゼと言います。その音を聞きながら、浅煎りから深煎りまで焙煎度合いをコントロールしていきます。ここで味が決まると言っても過言ではありませんね。豆のポテンシャルを引き出すのも焙煎の技術。そこはサッカーに似ているところがあると感じています。


どういったところが似ているのでしょうか?

稲垣 いろいろなところで似ているので話し出したらキリがないけど(笑)、今の話で出たポテンシャルという点では、サッカーでは選手のポテンシャルを引き出すためにシステムやその選手のポジション、周りの選手との噛み合わせ、どういうメンタル状況にさせるか……といろいろな要素がありますよね。コーヒーも同じで、豆のポテンシャルを引き出すために焙煎、抽出方法、淹れ方……といろいろな要素があります。そういった要素が噛み合って最高の状態になった時にいい味が出る。そこがすごく似ています。あとはどちらも答えがないんですよ。100点という答えはないけど、ディテールを詰めて再現性を持たせることで、少しでも安定していいパフォーマンスを出せるようにする。そのための要素がコーヒーもサッカーも多すぎて、絶対に同じにはならないんです。サッカーで言うとその要素は、選手それぞれのコンディション、気候、ピッチ状況、チームの雰囲気、戦術などがあって、コーヒーは豆が育った場所、気候、精製方法、焙煎方法、抽出の仕方、お湯の温度、豆の量、割合など本当に多い。さまざまな要素が噛み合わさって一つの味になるんです。そこが奥深いところで、全く同じ状況にはならないので、同じ味にはならないんですよ。でも、少しでも再現性を持たせようとすることはできる。絶対的な答えがない中での答え探しみたいなところはサッカーもコーヒーも同じだと思います。


その再現性を持たせるために焙煎を始めたんですね。

稲垣 そうですね。少しでも満点に近い味を出せるように、焙煎を始めました。今までは買ってきた焙煎された豆を自分で挽いて、お湯の温度や豆の量を自分で調整しながらいろいろ試行錯誤してやっていました。ただ、ある時に「この豆はどんな淹れ方をしても、どう工夫してもうまく淹れられない」ということがあって、自分が納得できる味にできなくて、「そもそも焙煎がだめなんじゃないか」と思い始めたんです。焙煎がだめだったら僕の努力は意味がないんですよ。焙煎の過程を見ていないから、この豆をどう淹れたらいいのかがわからないし、扱いきれていないんだと思って、「じゃあ自分でやろう」ということで自家焙煎を始めました。自分は凝り性なんでしょうね。ハマるとどんどん追求したくなるんです(笑)。


SNSに投稿されていた、「手網、コロンビア、フルシティロースト、焙煎時間11分40秒」を説明していただけますか?

稲垣 そうですよね(笑)。ではまず「手網」から。焙煎の仕方にもいくつかあって、僕がこの時にやっていたのが手網という方法です。手網は上と下に網があって、豆をサンドできるようになっていて、取っ手を持ってシャカシャカ振りながら火に掛けます。「コロンビア」は豆の産地。「フルシティロースト」は焙煎度合いです。ほかにはフレンチローストやシティローストなどがあって、フルシティローストは深煎り。深煎りの中にもいろいろなレベルがあるので、自分のイメージとしてはそのくらいの焙煎度合いを狙っていますという意味です。「焙煎時間11分40秒」はそのくらいの時間で到達しましたということですね。焙煎時間を延ばしていけばもっと深いイタリアンローストになっていくし、もっと浅煎りにしたければ時間を短くします。これは1ハゼが終わって2ハゼになり始めて、少し経ったぐらいなので、長めで深煎り目。苦味がしっかりしていて、ちょっと強さがあるような味になります。


火加減も重要と言っていましたが、火はなにでやっているんですか?

稲垣 ガスコンロの火を使って、中火くらいでやっています。ガスコンロでもできるんですよ。ただ、家でやる時はしっかりと後片付けをするようにしてください、チャフという豆の薄皮みたいなものがすごく飛ぶので、奥さんに怒られないようにしっかり掃除してください(笑)。


焙煎する時はひたすら網を振りながら、豆と火に向かっているんですね。

稲垣 そうですね。豆の焙煎具合を見ながら火との距離を変えるのも大事なので。最初は遠目で、少しずつ下げていって、1ハゼで音が鳴ってきたらまたちょっと離してとか。僕はYoutubeで動画を観たり、本を読んで学んでいるので、詳しい人から直接教わってみたいです。先ほども言ったように正解がないので、人によって言っていることが違うんですよ。だから大体のところまで学べばあとは自分の感覚。焙煎もそうですけど、淹れ方もそう。抽出の時間とかも違ったりするので。手探りでやっていくのが一番いいですね。


トライ&エラーでどんどん修正していくんですね。

稲垣 常にトライ&エラーです。それもサッカーに似ていますね。修正して、修正して、どんなに修正しても100点には絶対にならないんですよ。


焙煎をやり始めて、コーヒーを淹れるのに掛かる時間が増えたと思います。どんなことを考えながら淹れているのでしょうか?

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