12月9日(木)、マッシモ フィッカデンティ監督との契約満了および長谷川健太氏のトップチーム監督就任が発表。同日、山口素弘ゼネラルマネジャー(GM)がオンラインでの囲み取材に応じました。
山口素弘GM
本日はお集まりいただきありがとうございます。マッシモ フィッカデンティ監督は2021シーズンをもって契約満了となりましたことをご報告させていただきます。フィッカデンティ監督は2019シーズンの途中、クラブとして厳しい状況の中、就任していただきました。新型コロナウイルスによる厳しい環境にありながら、2020シーズン、2021シーズンとすばらしい闘いを見せてくれて、好成績を残してくれたことに対し、心から感謝したいと思います。クラブとしてはフィッカデンティ監督に対して感謝の言葉しかありません。クラブの代表としてこの場を借りて改めてお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
2022シーズンより、新監督として長谷川健太新監督を迎えることをご報告させていただきます。今シーズン以上の成績を残すべく、一丸となって闘っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
ー2シーズン連続で好成績を収めたフィッカデンティ監督は、続投に意欲を示しながらクラブを去ることになりました。改めて経緯を教えてください。
双方合意の上、契約満了という形となりました。
ー契約年数が1年残っていたかと思います。
契約年数についてクラブは公表していません。内容に関してはリリースのとおり、契約満了となります。それがクラブとして伝えられることになります。
ー続投の方針はあったのでしょうか?
ありました。
ーその上で、契約満了となった理由を教えてください。
契約に関しては公表できません。申し訳ありません。
ーフィッカデンティ監督への評価を教えていただけますか?
先ほどお話ししたとおり、クラブが苦しい状況の中で就任していただきました。私も監督経験がありますけれど、途中から監督を務めるというのは難しいことです。まずは引き受けてくれたことに感謝していますし、2019シーズンを乗りきり、2020シーズン、2021シーズンは新型コロナウイルスの影響で難しい中でしっかりと闘い抜いてくれましたので感謝しています。
ークラブとしてはフィッカデンティ監督体制を継続したかったということでしょうか?
交渉したというのがすべてだと思います。
ー契約満了という結果に至った時、続投に意欲を示していたフィッカデンティ監督はどのような反応をしていましたか?
反応というのは特に記憶に残るものはありませんでした。フィッカデンティ監督も経験豊富な監督なので、場数というのは踏んでいるかと思います。サッカーに対して真摯な気持ちを持った方です。フィッカデンティ監督もクラブも先に進むしかないというところだと思います。
ー積み上げてきたものを長谷川監督に託すことになった理由を教えてください。
積み上げてきたものは大事にしながら闘っていくのが基本路線だと思っています。当然、まだ足りないものもあります。今シーズンもそうでしたけど、リーグ優勝した川崎フロンターレさんとの勝点差は約20ポイントあります。この差をどうやって縮めていくのか、それが今後の課題というか、大事なことかなと思っています。
ー長谷川監督に打診を始めた時期を教えてください。
私の立場として、どのような結果になろうと空白期間が生まれてはいけないので、準備はしていました。
ー小西工己社長は、人事に関して「山口GMに任せている」と語っていました。今回の人事も山口GMによるものという理解でよろしかったでしょうか?
はい、そうです。
ー来年のチーム編成について、すでに話は進んでいる状況でしょうか?
はい、進めています。
ーこれまで積み上げたものを生かしつつ、さらに上積みをしていくための補強を考えているのでしょうか?
はい、そのとおりです。
ー具体的にはどのように考えていますか?
メディアにもいろいろな情報が出ていますが、競争ごとですので言えません。申し訳ありませんが、ご理解ください。
ールヴァンカップ優勝という実績を残した監督が退任することは異例かと思います。フィッカデンティ監督の下で強化を進めて来シーズンに臨むよりも、新監督を迎えるほうが好成績を残せると判断したのでしょうか?
契約満了ということがすべてになります。
ー続投の方針があった中、双方合意の上で契約満了になったとお話しされました。どのような議論があったのでしょうか?
いろいろなことを頻繁に議論しました。
ークラブとしては、フィッカデンティ監督を続投してさらにいい成績を収める可能性についても考えたのでしょうか?
当然、続投してもらうのであれば、上積みが必要な箇所についても話をする必要があります。長谷川監督になった場合はこういうことを求める、という内容だったかと思います。
ー長谷川監督に期待していることを教えてください。
重複することもあるかもしれませんが、今まで積み上げてきたものをベースにしながら上積みしていくことを期待したいと思います。
ー11月には大森征之スポーツダイレクターの契約満了が発表されました。フィッカデンティ監督の契約満了と関連することはありますか?
全くありません。
ー山口GMとしてどのようなチーム作りをしていくのか、どのようなサッカーをしていくのか、そのあたりのビジョンを教えてください。
先ほどもお話しさせていただいたとおり、現在のJリーグにおける一番は川崎Fさんです。そこに追いつき、追い越すことを目指さなければいけません。そうでないと「Jリーグはおもしろくない」と思われてしまいかねないですので。そういう意味で、一つのターゲットはそこになると思います。また、今シーズンもたくさんのファミリーの方々に集まっていただいて、Jリーグで最も多い観客数を記録しました。期待値はすごく高いと思うので、毎年成長しなければいけない、バージョンアップしなければいけません。そこも判断の要因になったと思います。クラブとしては現状に満足していてはいけませんので。事業部の方々も、これだけの観客数を記録しながら、さらに多くの観客を呼ぶための努力をしていただいています。現場は当然、期待に応えるべくさらに進化していかなければいけないと考えています。
ーバージョンアップという点についてお聞きします。これまで取り組んできたサッカーになにかを付け加えるという意味なのでしょうか? それともスタイルを変換するということなのでしょうか?
皆さんは“攻撃”というところの答えを求めているのかなと思いますが、それを僕が言ってしまうと「グランパス、攻撃サッカーに転換」という見出しになってしまうので言えません。サッカーというのは、どちらかに偏るものでありません。カウンターサッカーなのか、ポゼッションサッカーなのかという議論がありましたけど、どちらかというのはないんですよね。速く攻められるなら攻めるし、そうでないならじっくりと攻めますよね。トータルとして、アグレッシブなサッカーを展開したいなと思います。これだけたくさんの観客が足を運んでくれているので、より魅力的なサッカーを展開しなければいけないと思っています。
ーリーグ戦最終節の前後に、フィッカデンティ監督は続投に関するコメントをしていました。トヨタ自動車株式会社の豊田章男社長との面会をして、「今後もサポートしていただける」とも語っていましたが、その時点でフィッカデンティ監督とは来シーズン以降に関することについてどのような話をしていたのでしょうか?
どの程度というのは、すごく難しいところです。ずっと同じように話をしていたと思います。契約の関係もあるので、それ以外には説明のしようがありません。
ーリーグ戦を5位で終え、ルヴァンカップを制したクラブの監督が代わることになります。来シーズン、狙っていくべきものを教えてください。
ACL圏内に入ること、国内タイトルを獲ることというのは、ここ数年変わっていない目標です。監督が代わったとしても、変わらないところです。
ー上積みという表現をされていましたが、アプローチすべき部分についてどのように考えていますか?
昨シーズンもそうでしたけど、厳しい状況の中で選手は必死に闘ってくれました。ただ、まだまだできると思っています。経験豊富な選手も含め、まだまだ伸びると思っています。そのあたりも含めて、伸びしろがあると考えています。また、それを引き出してくれるのが長谷川新監督かなと思っています。
ーさらに伸ばしていける部分というのは、運動量なのでしょうか? アタッキングサードにおけるアイデアなのでしょうか?
全部です。サッカー選手であればすべてに対して求めていくのが普通だと思います。まだまだ求めていきます。グランパスの選手たちも「もっとうまくなりたい」という想いを持っています。それを表現させるのは、スタッフや私の仕事になると思っています。
ーフィッカデンティ監督は主力選手をある程度固定して闘っていたと思います。長谷川監督に対し、若手の起用などで期待する部分はありますか?
第一に勝利を目指してやってほしいのは当然です。中長期的に考えると、そういった部分も非常に重要になってくると思います。久しぶりのタイトルを獲ったということもありますし、これを一過性のものではないようにするには、今いるレギュラークラスの選手に限界まで頑張ってもらうのは当然ですけど、彼らが引っ張る、もしくはその次につながる若い選手たちが食らいついていくようなチームにしてほしいと思います。そのあたりはやってくれる新監督だと思います。
ー長谷川監督はガンバ大阪時代に3冠を達成しています。当時のG大阪は守備に問題があり、その守備を改善させました。グランパスの場合はその逆だと思います。攻撃を活性化させるような手腕についてどのように評価していますか?
僕はその逆だと思っていて、あの時のG大阪は攻撃陣が躍動感を持ったプレーしていたと思います。これもよくある議論ですが、どのように点を取るのか。形から入る人がいれば、選手の特長を生かしたやり方もあるでしょう。そのあたりを詰めていくべきだと思います。どっちがどっちというような、両極端にはならない話だと思います。
ーリーグ優勝を意識していると思います。王者の川崎Fにあって、グランパスにない部分はどこだと考えていますか?
単刀直入に言うと、リーグ戦はどうしても長丁場なので、それを闘い抜くだけの力の差でしょう。先ほどお話があったように、もしかしたら若手なのかもしれません。リーグ戦は長い期間で行われるので、好不調の波もあるでしょう。ただ、好不調の波を小さくしなければいけない。そのためには当然、選手層も必要でしょう。リーグ戦だけではありませんからね。今シーズンのグランパスはリーグ戦だけではなく、ルヴァンカップ、天皇杯、さらにACLも闘いました。何度も言いますけど、今シーズンを闘った選手たちはコロナ禍でバブルを経験しながら、たくましく闘ってくれたと思います。
ー川崎Fはここ数年強いですが、少し前まではトップにいけない時期がありました。中長期的な目線を持ってグランパスを強くしなければ、川崎Fのあとには続けないという考えもできると思います。そういった目線で見た時、山口GMが思い描くビジョンを教えてください。
川崎Fさんは質問いただいたように、なかなか勝てない時期もありましたね。決勝で負けるなどタイトルに届かなかったこともありました。ただ、そこで一度タイトルを獲ってから、今は常勝軍団になってきたのかなと。表はそうですけど、その裏ではアカデミーなどいろいろな部分。皆さんもご存知かもしれませんが、川崎Fさんは“川崎劇場”と言われるようなスタジアムの雰囲気があり、街ぐるみの活動でも努力されています。ここ2、3年のことではなく、もっと前から取り組んでいたと記憶しています。それが身になってきたのがここ最近だと思います。そうなったからといって、歩みを止めたらすぐにクラブは落ちてしまうと思っています。川崎Fさんは、そんなことはないと思いますけどね。そこには並大抵の努力をしなければ追いつけないと思います。あまり表には出ていませんが、グランパスにおいてもアカデミーはだいぶ充実していると思います。私もアカデミーに携わったことがありますけど、私がアカデミーダイレクターに就任する前までの努力があり、それを私が引き継ぎ、その次に引き継いでいただいている。そういったことを今後もうまく生かしていくこと。「グランパスでプレーしたい」と言ってくれる選手を補強しながら、全体的なチーム力を上げていきたいです。たくさんのファミリーの方々を集めていただいている事業部の方々と力を合わせながら、魅力あるサッカー、魅力あるクラブにしていきたいです。
ーグランパスは来年、30周年を迎えます。鹿島アントラーズや川崎Fなどそれぞれのチームごとにカラーがあると思います。山口GMから見て、今のグランパスのカラー、今後はどのようなカラーリングにしていきたいか聞かせてください。
私も長年、Jリーグに携わっていますけど、だんだんと各クラブの色が出てきたのかなと思っています。「色」ってなんなのかとなった時、もしかしたら中から見るものではなく、外から見られるものがグランパスの色になってくると思います。僕が「白」と言っても、周りから見ている人が「赤」と言えばそれでいいと思います。僕から「これ」というのはないかなと。スタジアムに来ていただいた人たちが試合後に「グランパスは今日もこうだったね」、「グランパスは今日はこうじゃなかったよね」ということを言っていただければいいですね。それが単語なのかもしれないですけど、「グランパスはこうだ」というような象徴になるのかなと思っています。自分の中でなんとなくのデザインはありますけど、今は言いません。
ー新たなコーチングスタッフの編成、方針について聞かせてください。
長谷川監督が信頼するスタッフも来るでしょうし、既存のスタッフに加え、グランパスの色を作ってくれるようなスタッフもいる編成が非常に理想的だと思います。
ー長谷川監督を支えるコーチングスタッフについて、どのようなバックアップが必要だと思いますか?
現場のピッチサイドだけではなく、今ではスタジアムの上のほうからピッチ全体を見ている分析サポートコーチもいるでしょう。コーチの一体感は非常に大事だと思います。ただその中で、いろいろなアイデアが豊富に出てくるようなスタッフ編成が大事だと思います。いろいろなアイデアがありながらも、「一致しているところはここだよね」というものがあることが大事だと思います。
ーG大阪では片野坂知宏(現大分トリニータ監督)さん、FC東京では長澤徹(現京都サンガF.C.ヘッドコーチ)さんや安間貴義(前FC岐阜監督)さんが長谷川監督を支え、いい成績を残しました。同時にコーチングスタッフが成長した部分もあると思いますが、長谷川監督の下でスタッフ陣が育っていくという期待はいかがですか?
選手だけに成長を期待しているのではなく、それを導くコーチングスタッフにも成長していただきたいと思っています。そういった思いを持っている方々しか集めようと思っていません。コーチングスタッフは、ある意味で色は出るのかなと思います。コーチングスタッフの編成が発表されたら、もしかしたらわかるかもしれませんので、楽しみにしていてください。
ーどのような部分がすばらしいと感じて、長谷川監督を抜擢したのでしょうか? 彼のすごさはどこだと思いますか?
当然、実績があり、そこは重要な部分だと思います。加えて、サッカーに対して熱心な姿勢を持っている。フィッカデンティ前監督もそうでしたけど、長谷川監督もそのような意識が高いです。私自身も監督としてJ2時代に対戦したことがあり、当時のG大阪の選手、ベンチワークなどを拝見していました。現役時代の長谷川監督も知っていますけど、プレーはかなり豪快だったなと。監督としては繊細な部分がある一方、豪快というか、思いきって手を打つ部分もあります。私が改めて言うことではありませんけど、そういうところは期待というか、評価できると思っています。
ー若手の育成という面では、G大阪時代に宇佐美貴史選手、井手口陽介選手、堂安律(現PSVアイントホーフェン)選手、FC東京時代に久保建英(現マジョルカ)選手など、日本代表の中心になるような選手を抜擢しました。グランパスでも同じような手腕を発揮できると思いますが、どのように感じていますか?
補足すると、清水エスパルス時代の岡崎慎司(現FCカルタヘナ)選手もそうですね。今、名前を出していただいた方々は日本代表クラスまでいった非常にすばらしい選手です。ご質問いただいたように、そのあたりは長谷川監督にもお願いしたいと思いますし、私としても期待しています。
ー長谷川監督が来ることによって、どのように変わってほしいと思っていますか?
変わってほしいというか、もう一回り、もう二回りほどいいチームになってほしいです。当然変える部分はありますけど、それはネガティブな変えるではなく、ポジティブな変える。ただ難しいことに「1+1=2」に必ずしもならないのがサッカー。なにかを求めれば、なにか失われる部分もある。そこを気をつけながらチーム作りをするのが監督で、それができるのは長谷川監督だと思っています。
ーアカデミーとの連携の部分で、長谷川監督が実際に試合に来たり、彼になにか役職を与えるようなこともあるのでしょうか?
特に(アカデミーでの)役職はないと思います。当然、アカデミーのことも気にかけていただいていると思います。試合にも観に来ていただきたいですね。目立つのが好きな方ではないので、こっそりと観に来てくれるかなと思っています。