マッシモ フィッカデンティ監督
ー前節の鳥栖戦から広島戦まで準備期間が長くありました。広島戦に向けて、チームとして最も落とし込んだことを教えてください。
本来あるべき形でトレーニングできました。平日開催の試合がなく、1週間の準備期間があった前回(鹿島戦)も同じような話をしたと思います。1週間空いた時にやるべきトレーニングができています。3日に1回、4日に1回といったように試合があると、リカバリーしかできません。そういったトレーニングをした上で、試合に近づいていると思います。今日の練習をして、コンディション面、メンタル面において良い状態にあることが選手のプレーに表れていたと感じます。すごくチャージできている状況です。中2日、中3日のゲームでは、試合に向けた緊張感が常にある状況でのトレーニングになりますが、それから一度開放されているということもあります。試合に向けたスイッチの入り方は逆にすごくいいと手応えを感じています。
ー前節の鳥栖戦で負傷交代した山﨑凌吾選手の状態はいかがでしょうか?
捻ったことにより、膝の内側靭帯を痛めている状態です。復帰に向けてという面では、彼が痛みを絶えられるようになったらということが目安になると思います。1カ月掛かるものではないと思いますけど、彼が痛みに対してどのような感覚を持っているのか。彼次第になる部分もあると思います。こういったケガは、選手によってすごく早く戻ってくることもありますし、痛みに強くない選手は時間が掛かることもあります。そういった面で彼次第だと思います。どちらにしても早い復帰を願っています。
ーFWの選手が少ない中、先週の練習では長谷川アーリアジャスール選手がいい動きを見せていました。彼の起用についてはいかがでしょうか?
シーズンの頭から言っていますし、シーズンの途中でも言っていますけど、どういった選手がゲームに出るべきか。「そろそろプレーできるかな」、「コンディションがやっと上がってきたな」といったように宙ぶらりんな状況ではなく、相当ガツガツやり込んできた上で、出場機会をなかなか得られていない選手もいるくらい練習の中で激しくやっています。もし起用しても、間違いなくしっかりと確実にプレーできること。グラウンドに入ってプレーしてみたら、「やっぱりまだだったかな」と不安が残るような状態の選手を優先して起用するつもりはありません。アーリアに関しては復帰してから「まだ時間が必要」だと言っています。大きな期待を込めてご質問いただいていると思いますが、私は皆さんよりも何倍も、何十倍も、何百倍も彼のことを練習で見ています。皆さんの前で彼がプレーする機会があり、そういうふうに見えたのは彼のために良かったと思います。私は監督としての判断をしなければいけません。彼のコンディション、再発のリスクなどを考えた上で、くるべき時がきたらしっかりとプレーするように戻ればいいと思います。プレーを覚えていかなければいけないという位置づけではないと皆さんもわかっていると思います。コンディションがいいか、悪いのかで、使う、使わないを判断しています。まだサッカーというスポーツをプロのレベルでやって大丈夫なコンディションまで戻っていない、と判断していると思っていただけたらいいです。
ー前節はマテウス選手やガブリエル シャビエル選手を最前線で起用する場面もありました。今後もそのようなプランを考えているのでしょうか?
直近の試合では金崎(夢生)が出場できます。あの試合の結果について、誰の責任という話ではありませんが、開始20秒も経ってないくらいで、最初のロングボールでの接触でケガをしてしまいました。彼はなんとかできるかと思ってトライしましたけど、動けない状態でした。1分も経たないうちにプランを変えなければいけませんでした。しかし、あの試合では決定的なチャンスを作れていましたし、ほかの選択肢を使って対応できたということが言えるかもしれません。FWがまた1人減ってしまうのは苦しい状況ですが、そういう闘いもできます。鳥栖戦は3日前の夕方に鹿島でゲームがあり、中2日、さらに昼のゲームでした。あのコンディションの中でメンバーのやりくりをして、鹿島戦でもなるべく元気な選手を残しました。いろいろな背景があった上でのアクシデントで、あの対応になりました。どの試合でもなにが起こるかわからないということを頭に入れた上で、まずはベースの金崎を使えること。そして試合の流れに応じて、対応していくしかないと思っています。今の時点でどうこうと予想して言うような話ではないと思います。
ーディフェンスでは27試合中12試合で無失点です。監督として良いこととして捉えていますか?
どのように闘うかは各チームによって違いますし、私もチームを作る時にどういう選手がいるからどういうやり方をしていくというように当てはめていきます。今年はこういうメンバーで取り組み、やり方を作っていく中、どのリーグにおいても勝つチームは失点が少なく、得点をしっかり奪う。特に失点が少なければいけないのは言い続けています。そういった部分を選手たちが理解して、サッカーをできていると思います。数字が出ている要因としては、DFだけ、GKだけではなく、全員が参加しているからです。失点はリーグ2番目に少ないですし、得点も悪いわけではなく真ん中よりも上だと思います。さらに、多くの得点者がいます。全員がしっかりと守備をして、攻撃に絡んでいくサッカーは数字に出ていると思います。結果も出ていると思いますしね。グランパスがそういうサッカーに取り組み始めてまだ1年目のシーズンです。順位を上げるためにどういうふうに変わっていかなければいけないのか、どういう質になっていかなければいけないのか。そういう部分はまだまだ極めていかなければいけないと思っています。ただ、手応えをすごく感じていて、いい数字が出ていると思います。
ー11日の広島戦、15日のFC東京戦を終えれば、連戦がなくなります。コンディション面では選手たちをどのようにコントロールして、なにを重視しましたか?
今シーズンはいろいろな問題がありましたが、改めてそれを口にするのも嫌なくらいですので、そこは理解していただきたいです。ケガといってもはっきりと長期離脱する場合もありましたし、発表することなく、週末の試合に間に合うかもしれない状況、1週間は試合に出場できない状況など、いろいろなことがどのチームにもあったと思います。どの試合の前でも、目の前の試合を選手たちがしっかり見ていたこと。限界が来たから、「この試合はしょうがなく、次の試合をやれればいい」という位置づけに絶対しないで、そういった取り組み方を選手がここまでやってこれたのは大事だと思います。選手たちがあらゆる部分で貪欲に取り組み、理想的なリカバリーの日数が与えられていない中でどう闘い、どう勝つか。そこに集中できた選手も多かったと思います。その中で技術的な部分、チームとしてより戦術的に闘う部分を強く理解していくこと。ほかのチームを上回ることができるというサッカーの見方が、普通の状況ではできなかったことをできた選手もいると思います。先ほどチーム力が上がってきたという話をさせていただきましたが、個人個人で見た時にものすごく大きなジャンプアップをした選手が何人もいるんじゃないかなと。それは試合に多く絡んでいる選手も、あまり出場機会がない選手でもです。メンタル面で大きく成長し、このシーズンを乗り越えたことでフィジカルレベルがすごく上がった選手も多いと思います。選手たちがそのような取り組み方をするという考えを切らさず持ち続けたことが、今シーズンのここまでの結果、数字を残すために一番大きな影響を与えたと思っています。
ー今節で対戦する広島の特長について聞かせてください。
過去の試合でも対戦相手について質問をいただいた時、「本来ならもっと上の順位にいなければいけない」、「メンバー的には(上にいなければいけない)」といったような話をしてきました。広島に関しては本当に素晴らしいチームだなと思っています。今シーズンを通してどのようなプレーをしてきたか。特に今のタイミングでまとめて多くの試合を見ていますけど、素晴らしいプレーの連続だなと。そういうふうに見た上で、実際の勝ち点に反映されていないと思っています。「本来ならこういうサッカーをしたかったのにできなかった」ではなく、やっているサッカーはいいのにツキがなかったりして勝ち点を落としていると思います。やっているサッカーを選手たちに理解させた上で準備しなければいけないと思っています。どの試合も素晴らしいゲームをしているのが広島だというふうに見ています。
ー鹿島戦のような激しい試合展開になることが予想されます。今は守備が機能していると思いますが、監督はどのように感じていますか?
鹿島との試合に準備する時、「いいゲームをしなければ鹿島には勝てない」と言いました。結果を振り返る時も、「今日は本当にいいプレーがあったという場面がいくつもなければ鹿島には勝てない」と言っていたと思います。ご質問いただいたとおり、広島も上位にいなければいけない内容のサッカーができていると評価しています。強度やインテンシティーという意味でも、内容の伴った状況でいいプレーができなければいけません。個人の良さが集まっていいという部分もそうですが、チームとして動けているなと。素晴らしく指導されているチームだなという印象です。チーム力という部分でも負けてはいけないと思っています。全員がチームのために動き、ワンプレー、ワンプレーにどういう意味があるのか。それを強く意識した状況でプレーできるかが大事だと思います。