マッシモ フィッカデンティ監督
ーAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のグループステージを5勝1分けというすばらしい結果で終えました。
グランパスが久々にACLに出場した中でしっかりと1位突破できたこと、グループステージをしっかりと勝ち抜けたことは良かったと思います。1位突破以上の結果はありませんからね。タイにいる間にも何度か言いましたけど、あらゆる面で「これ以上悪い環境の中でサッカーをやることができるのか」というような環境の中でやりきれました。「こんな状況にも関わらず」といったものは置いておいて、とにかく結果を出せたことが大事だと思います。環境がいいところでやれたとしても結果の部分しか話す必要はないと思いますので、全員でやりきれたのではないかと思います。
ー立ち位置の変化や選手の入れ替えもありました。ピッチの中で試せたことはありますか?
結果以外に持ち帰れたものとしては、隔離された状態が続いた3週間で疲れきった頭と体。そしてそういった状態で帰ってきたにも関わらず、日本でも2週間の隔離が続く中でゲームをやらなければいけない状況におかれているということ。それだけです。
ー帰国後も隔離が続く中で、1週間の準備期間を経て、中2日で2連戦をこなさなければいけません。マネジメントの難しさはありますか?
こういう状況で試合をやらされることに対する不満ははっきり言ってあります。今も話し方を考えて話していますけど、「タイから帰ってきてどうか」というところで、そういった状況で試合をやらなければいけないことに対してすごくストレスがあり、不満があると言っています。その上で「その状況をこう回します」と言ってしまうと、結局受け入れてしまったみたいになるので、「この状況で試合をやらなければいけないのであればベストを尽くします」と言うしかないかなと。「この時間でこうやってこうやればうまくできる」という答えがあるのであれば、私もそこまで不満を言いません。この状況でやらなければいけない選手たちが気の毒で、それはおかしいと思っています。ですから、タイでこういうサッカーをやっていろいろ持ち帰れたことがあったとしても、タイでも中2日で過酷な状況でサッカーをやって、とにかく結果にこだわるしかなかったので、さらにチームプレーを向上させて、新しいフォーメーションがなどどそんな呑気なことを言っていられる状況ではない中でずっとサッカーをやっています。結果が出ていると少し欲張ってあれもこれもと思うかもしれないですけど、本当にギリギリのところでかろうじて勝っているという環境です。そういった危機感というものは、我々が持っていればいいことですけど、見ている方にとっては実は簡単なことをやっているのではないかと思われてしまうと、我々自身がかなり厳しい状況の中でやっていることがそう映らなくなってしまうと思うので、そこは理解いただけたらと思います。
ー次の試合でも求めていくのは結果であって、それ以上はなにも求められる状況ではないという考え方になりますでしょうか。
この質問に答えてどこにたどり着きたいのかがわかりません。久しぶりに日本に帰ってきて、せっかくみなさんと(画面上で)顔をあわせて話しているのに、ストレスしか感じないような質問だと思います。この質問に答えてどういった記事になるかが全くわからず、「この状況でやれるだけやります」と答えて、「じゃあ結果しか求めないのですね」と言われてなんと言えばいいのかなと。「負けてもいいから、一生懸命その試合にしっかりと全員で参加します」と言っていいのでしょうか? 私は30年以上サッカーをやってきて、あなたよりもサッカーについてよくわかっている状態ですし、先ほどからリスペクトを感じられません。イタリアではどんな状況であろうと、結果を出せなかったら袋叩きにあうような環境でしたので、そういったことには慣れています。もちろん結果を出さなければいけない、サッカーの試合が目の前にあるのであれば勝たなければいけないということはわかりますけど、このような状況でサッカーをやらせるということがイタリアではまずないと思います。もっとサッカー選手が守られていますから。ただ、日本では帰ってきていろいろな理由があった上でも、日程の変更が受け入れられないという中でサッカーをやるんだと。それで試合を放送してスペクタクルとしてやるんだということが日本でのやり方だと聞いたので、全力でやりますと答えました。いろいろと言いたいことや、どんな生活をしていたのかを全部見せたいところではあります。それを見てもらってもみなさんが信じるかわからないですが、そういう状況の中でやっているということをよく理解していただきたいです。そういった中でベストを尽くしますと言ったことに対して、勝手にそちらで、じゃあこういうことですねというような線引きをしないでもらいたいです。我々としてはあらゆる面でベストを尽くしますと言っているので。どこでというところは関係なく考えていただいて、私たちは約1カ月間ずっと部屋で1人でご飯を食べていました。それ自体が異常な状態だと思います。そういう中でもみなさんとの関係が始まった1番最初から言っていますけど、みなさんがいらっしゃるから我々の姿などいろいろなものを報道していただけますし、お互い様の関係でだと思っていますから、私はみなさんとの関係にこだわっています。タイに行く前には「結果にこだわる」と言いました。それで「結果が出ましたね。帰ってきてからもこんな状況で過ごしていますけど、次はどうしますか?」、「まずは結果にこだわってしっかりやるのですか?」と質問されて、その質問が私に対してのメッセージになるような部分が少しあるように感じてしまいます。我々がどういう精神状態で、今会見の場に参加していることを考慮していただけないのかなと。先ほど言ったように1カ月近く隔離生活が続いていて、その中でもとにかくみなさんのためにと思ってやっています。もちろん自分たち自身のためでもありますけど、ファミリーのみなさま、こうやって取材してくださっているみなさまのためにもいい結果を出したいと全力でやっているので、そこをわかっていただけないのならすごく残念です。
ーACLグループステージ突破、イタリア代表のユーロ2020優勝おめでとうございます。
(日本語で)ありがとう。
ーACLの試合をとおして、チームが逞しくなったところや、細かいところで得られた部分があると見ています。例えば齋藤学選手と長澤和輝選手のコンビネーションであったり、小さいグループでの連携面で養えた部分はありましたか?
今いっていただいた齋藤と長澤の部分に関しては、4−4−2でやる時よりも4−3−3にしたほうが長澤が近くにいる状態をより作れます。長澤がスペースをうまく作ってくれて、(齋藤が)1人しかいない時よりもプレーするスペースを確保できたという連携は見えたかなと思います。そうやって見ていただいているように形になって、より明確に見えた部分もあるでしょうし、それ以外の部分でもトレーニングの中で落とし込んで、実際にゲームの中でチャレンジして、形が見えた部分もあります。我々自身にとっていい方向にいっていると思っている部分もありますので、そういったところは今シーズンの中でも十分試合数がありますので、今後も出していけたらなと考えています。
ー山﨑凌吾選手を始め、アタッカーの選手たちが自分たちの形で得点を重ねたこともいい経験になったかと思います。そのあたりはどのように見ていましたか?
攻撃の形はおっしゃっていただいたようにいい形でできたんですけど、日本でサッカーをやるのとは全く違った環境の中で、それぞれの相手に対してどういうサッカーをしなければいけないかをガラッと変えて試合ごとに準備しなければいけませんでした。頭の中で準備して、「こういったプレーになるかな」とシミュレーションした時に、グラウンドのイメージもしっかり持たないと、こうやって人とボールが動いてやるはずだったけど、ピッチコンディションの影響でボールが思ったとおりに動いてくれないということがありました。そういった部分を含めながら、試合中の修正を繰り返し続けた結果、いいプレーとして映るようにグラウンドで表現できたことがすごく重要だと思います。
ー金崎夢生選手がチーム練習に合流されました。金崎選手の状態をどのように見ていて、試合に復帰するまでのプランをどのように描いていますか?
彼が合流して、表現としては部分合流ということをはっきりと言っておきたいんですけど、一緒にトレーニングをしている状況をうれしく思っています。ただその中で、まだ何週も掛かる状況であるということは、彼とも話しています。なんとなくやっていたらやれてしまうではなくて、しっかりと時間を掛けて準備をしていかなければいけません。再発は絶対にあってはいけないようなケガからの復帰ですから。彼の膝の機能はしっかりと取り戻しているとドクターたちから評価をもらっています。ただサッカーは闘うスポーツですので、相手からの重圧を受けることもあれば、時には直接体にダメージを受けることもあります。自分の体重だけを支えればいいのではなくて、相手の体重が乗っかったり、体に負担が掛かる要素がたくさんあるスポーツですので、しっかりと闘える状態に仕上げるという意味で、何週も掛けてやるべきだというふうに判断しています。ただ、彼がどういう人間かはわかると思うので、一日一日、そういった方向に向かって確実に力強く進んでいってくれていると感じますので、みなさんも一緒に彼がなるべく早く戻れるように期待していただけたらと思います。