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天皇杯 JFA 第101回全日本サッカー選手権大会 2回戦 三菱水島FC戦 前日監督会見

86月
6月8日(火)、チームはトヨタスポーツセンターで非公開トレーニングを実施。練習終了後、9日(水)に行われる天皇杯JFA第101回全日本サッカー選手権大会2回戦の三菱水島FC戦に向けて、マッシモ フィッカデンティ監督がオンラインでの記者会見を行いました。

マッシモ フィッカデンティ監督


ーリーグ戦が中断し、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の前に天皇杯2回戦が行われます。カテゴリーが下の相手ですが、試合をどのように位置づけていますか?

公式戦なので、相手がどのカテゴリーかは一切関係ありません。リーグ戦後に多くの日数がありましたので、すごくいい準備をできたのではないかなと。この試合に勝つための準備、という位置づけでしっかりと準備できたと思います。その中で何人か選手が抜けていることもあり、普段のリーグ戦でスターティングメンバーとして出ていない選手が先発で出る形になっていくのかなと。私は日本に来てから長いですし、天皇杯は常にサプライズで溢れているような大会だとわかっています。試合にどう入るのか、試合をどう位置づけるのかを絶対に間違えてはいけません。まずは自分自身に言い聞かせた上で、選手たちと一緒にその準備をしてきました。


ーリーグ前半戦を振り返ったことで、練習の中で見つめ直す機会があったと思います。どのような部分に重点を置いてきましたか?

そのような作業をするために使える時間だと思いますし、我々自身もそういった時間の使い方をしてきました。あとはメンタル面での回復にもしっかりと時間を充ててきました。というのも、まずは明日の試合をしっかりとやった上でのことですけど、そのあとはACLに頭を切り替えてやっていく。サッカーというところだけではなく、結果的にサッカーの部分でメンタル、フィジカルコンディションがうまく出るか。ここから先、マネージメントがかつてないほど難しくなってきます。ACLのために約21日間タイに滞在することになりますけど、練習、試合以外の時間帯はほとんどホテルの部屋にいなければいけません。食事に関しても部屋でとらなければいけないなど、かなり厳しい条件で活動しなければいけないと説明を受けています。ほぼ隔離されている中、海外でサッカーをやっていく。気候に関してもハードでしょう。さらに帰ってきてから約2週間、バブル形式で生活しなければいけないと。ですので、厳しい気候の中で1カ月以上そういった生活を強いられます。ここで追い込み始め、約40日間を迎えるより、気持ちの面をしっかりと整えた上でその時期に入っていきたいなと。そういった考えを持ちながら過ごしていきました。


ーカテゴリーが下の相手なので、グランパスがボールを持つ時間が長くなると考えられます。どのようなことがポイントになると考えていますか?

自分自身が関わった試合以外でも、「一般的な感覚で天皇杯というものは」という、逆に言うと日本では天皇杯しかカテゴリーの差があるチーム同士の対戦はないと思います。サプライズは起こりますし、起きてきたサプライズを見ると、明らかに片方のチームのほうが力のあると見えた上で、スコアが0−1や1−2など「まさかの」がついた結果で負けることが多いと思います。内容的にもです。それが起きないためにはどうすればいいのか。相手を見下した取り組みを絶対にしない、と肝に銘じなければいけない。日本ではそういった大会が天皇杯だけになります。サッカーというスポーツの魅力的な部分は、そういったサプライズを起こすこと。サプライズを狙って、すべてがハマればできてしまうとも言えるスポーツだと思います。ほかのバスケットボールや野球などでは、明らかにカテゴリーの差があるチームが対戦したら、ほとんどのスポーツでサプライズは起きないと思います。サッカーはガチガチに固めて、どちらかのチームが内容で勝っている状況でも、シュート1本で1点が入れば勝ってしまう。それはサッカーの美しいところでもあると言いたいです。明日、グランパスに起きてはいけないことですけどね。そういったところも含めて、サッカーはすばらしいスポーツなんだなと。そういう見方をすると、改めて思えることもありますね。我々は絶対的な強さを見せつけて、グランパスらしい戦いを90分間続けて、しっかりと勝ちたいと思います。


ーJリーグのチームとは異なり、今回は対戦相手に関する情報が少ないと思います。

聞いた程度の情報しかありませんが、しっかりと走り、前からプレスを掛けるサッカーのスタイルだという情報があります。スタートのところで相手以上の圧力を掛けて、試合の頭からしっかりと闘いたいです。相手に変な勢いをつけさせないようにやらなければいけないと思います。


ー内容の濃かった前半戦を踏まえて、チームの現状をどのように感じていますか?

ほかのチームやいろいろな状況を踏まえて、その中でどれだけやれたかという自己分析の仕方があれば、長い歴史の中でグランパスを見て、自分がどのタイミングでグランパスに来て、去年どのようなシーズンを送った上で今年はどうなのか。あとは自分が来てからの一括にまとめて、今実際にどこの段階にきたのか。いろいろな見方をしながら分析してきました。自分がチームを作り上げた感覚がない2019シーズンの終盤を除き、2020シーズンの開幕前のところから「このやり方でやっていこう」という明確なものを徹底して、一緒にやってきました。昨シーズンと今シーズンのここまで、ちょうど1年半で合計100点ほどの勝点を挙げていると思います。1年半の間にそれだけの勝点を挙げられたのは、決して悪い数字ではないのかなという評価ができます。この時期は本来ならもう少し勝てて良かったのではないか、この時期はあまり勝てなくてもおかしくなかったのではないかなど、いろいろな見方ができます。特に大きなエピソードとして、金崎(夢生)が負傷してしまった時、あるいは今回丸山(祐市)が負傷してしまったと。そういうところでどのようなことが予想されて、どう対応していかなければいけないということを含め、長い目で見ていくと、こうなって当然だったという見方をできる部分もあると思います。全体図を見ていった中でも、いろいろと厳しい条件があったり、日程的に納得いっていない部分もあります。グランパスだけキツい日程になっているな、この時期はということもありながら、勝点をしっかりと挙げられている。勝点100点からもう少し上積みされていてもおかしくない状況があったというくらいの結果を出せていると思います。内容としてもです。十分にやれているのではないのかなと。今年の前半戦を含めて、そのような評価を与えていいのかなと思います。もちろん、もっとやらなければいけませんし、なにも満足していません。評価されてもいい取り組みはできていると思います。チーム単位にどうやって動いていくかという中、まずは明日の試合に集中すると同時に、ACLのことをもちろん頭の中にあります。2つの項目をしっかりと理解し、この期間はこのチームで絶対に乗りきるということがはっきりしています。そこにしっかりと取り組むように導いていきたいです。ACLが終わって日本に帰国した時には、また状況が変わってきます。Jリーグの後半戦とも言えるスケジュールが始まる中、7月半ばには選手の入れ替えも行えるようになります。その時点でのチームの現状をしっかりと分析した上で、ACLの続きがあるのか、ないのかも関わってきます。冷静に考えた上で、取るべき行動を取る必要があると思います。まずはその前のこの1カ月をしっかりとやりきりたいと思います。


ーACLまでの期間で成長を期待する部分は?

日程的な部分は先ほども話しましたように、タイに行ってからはほとんどリカバリーしかできない状況の中、行く前にやれることすべてをやれるのか。今はどのようなことがやれるのか決まってきています。あまりどれか一つを選んでできないのかなと。日本でトレーニングをするにしても、気候が暑くなってきています。タイでの大会期間中の16日間で6試合をこなす中、そこに向けてこちらでトレーニングを消化しなければいけない。フィジカルトレーニングの部分もしっかりとやっておかなければいけません。国内でやっているリーグ戦よりも全員が試合に絡んでくる形になってくると思います。チーム内での選択肢を増やす作業も必要です。同じ組み合わせで試合をする時に違った戦いをできるようにすること。あるいは同じ戦いをする中でも、違った選手が試合に関わること。そういった選択肢を増やす作業をしなければいけないかなと。明日の試合が終わり、日本での残り約1週間はそういった期間にしなければいけないと思います。ここまではリカバリーをメインにやってきました。


ー藤井陽也選手、児玉駿斗選手、石田凌太郎選手、吉田晃選手など若手選手たちに対して期待することは?

若手の成長には、試合に出て経験を積むことが一番大事だというのは明らかです。その中でどのチームも勝利を目指して闘っていますが、若い選手がプレーする時には経験の足りないことが影響し、もちろんミスが起こってしまうと思います。勝っていくチームを作っていく中、そういった若い選手が出るからこそもたらすべきものがあった上でミスをする形なのか。総合的に経験が足りなく、若い選手がプレーすることで残念ながらチームの力が落ちる状況でも使っていかなければいけないなど、若手の使い方にもいろいろなパターンがあると思います。まず明日について言えることは、「藤井は頭から出る」と明言しています。しっかりとやってくれなければ困ります。若い選手たちには常に「チャンスがきたら思いきってやってほしい」、「そういうチャンスがいつきてもいいように準備してほしい」と言っています。そういう機会があった時にミスをするのは、みんながわかっていることです。プレーする前から、あるいはプレーする時に意識しすぎないで、まずは自分がどれだけできるのかと。若い選手に対しては、彼らがどれだけできるのか興味があります。思いきった形でプレーしてもらいたいと。若い選手は予想できないスピードで成長することもありますので、チャンスが与えられても、チャンスが与えられなくても全力で取り組むことをやってもらいたいなと。そういったものはチームにいい力として反映すると思います。そういった若さのエネルギーに期待しています。少し違った話になりますけど、日本では何歳の時がサッカー選手として大事なのか。今は海外に行く選手も増えている中、そういった年齢が下がっている感覚は皆さんにもあると思います。日本では「若手」という一言が、Jリーグを見ていると大きな括り方をしているのではないのかなと。我々にも藤井や成瀬(竣平)、石田、吉田晃、児玉などの若手がいます。ほかのチームで「ルーキー」と言われている選手を見ると23歳。どういうことかと言うと、大学サッカーを4年間しっかりとやってきていると。高卒の選手が若手、大卒の選手も若手。それは同じ若手ではないんじゃないかなと。サッカーというスポーツにおいてその年代での変化はものすごくあります。同世代としかサッカーをやってこなかった選手と、高卒で1年、2年ほどプロの世界で揉まれて経験を積んだ選手は、同じ20歳の選手でも違います。大学でしっかりやってきた選手、高校まででしかやってこなかった選手。そこでの差もあります。若手、若手と言っても、その部分での線引を大卒なのか、高卒なのかで分けたほうが大事なのかなと。その部分も日本サッカーで選手を評価する際、私自身もそういった見方をしなければいけないのかなと。去年までいなかった選手だから1年目、という見方をしてはいけないと認識してやっています。