新型コロナウイルス感染拡大の影響で
グランパスアカデミーも活動中止を余儀なくされた。
それは選手の安全と育成の狭間で悩み抜いた決断だった。
6月2日(火)から活動を再開したものの
これまでどおりの生活を取り戻せる見通しは立っていない。
活動が制限される中での育成をどう捉えているのか。
今季よりアカデミーダイレクターに就任した佐々木理に迫った。
インタビュー・文=INSIDE GRAMPUS編集部
名古屋グランパスアカデミーが活動中止に至った経緯を教えてください。
佐々木 3月2日から3月22日と4月7日から6月1日の合計で約11週間、活動を中止しました。3月23日に感染予防策を取りながら活動を再開しましたが、4月初旬頃から関東や関西を中心に新型コロナウイルスの感染者が増え、愛知県でも徐々に拡大しつつある状況が続いていました。そういった情勢を我々フロントスタッフは注意深く見ていました。それに加えて、4月7日の週から学校が始まる予定でした。学校が始まると選手たちがほかの生徒や先生方と交わることになります。それが一つの転機になると考え、7日に話し合いの時間を設けていました。ただ、6日に愛知県から学校の臨時休校が発表されたので、その決定と新型コロナウイルスの感染拡大状況を踏まえて、活動中止を決めました。
活動中止を決断した時の心境はいかがでしたか?
佐々木 正直に言うと、とても悩みました。我々はJクラブのアカデミーですので、トップチームの安全な活動を最大限に考えることが前提にあります。そして第一に考えなければいけないのは選手の健康、つまり新型コロナウイルスに感染させないことです。ただし、アカデミーとしては選手たちを成長させることが大きな目的の一つでもあります。それはプレイヤーとしてもそうですし、活動をとおして人としても成長させたい。選手からも「活動したい」という声は上がっていましたし、活動させてあげたいという気持ちはもちろんありました。でも、誰も経験したことのないことが起きている状況で、正確な情報が今以上になかったのも事実です。活動させてあげたいけど、感染させられないという狭間で非常に悩みましたね。最終的にはクラブスタッフと話をしながら、先ほど言ったような状況を踏まえて中止の判断をしました。
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