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【インタビュー】マッシモ フィッカデンティ「苦闘の先にある未来へ」

2012月

12月20日(金)、マッシモ フィッカデンティ監督との契約を更新し、2020シーズンの指揮を執ることが発表された。『INSIDE GRAMPUS』はシーズン終了後、チームを明治安田生命J1リーグ残留に導いた指揮官にインタビューを実施。2019シーズンの総括と来シーズンに向けた展望を語ってもらった。




ーリーグ戦残り8試合というタイミングで指揮官に就任し、チームを残留に導きました。今シーズンの闘いを振り返っていかがですか?

最初に目標を設定する時に、私が引き継いだ時点では残留することが唯一のものだったと思います。その中でどのように闘って、どのような結果で残留したかに関して、私は満足していません。しかし、「必ず目標をクリアしよう」、「残留だけを考えてやろう」と取り組んできた中で、選手たちはしっかりと目標を達成してくれました。そのことについては「よくやった」と称えることができるでしょう。ここまでの8試合を指揮した経験を踏まえて来シーズンの作業に取り組めるので、少しリードした状態でスタートできるという意味で未来にもつながる期間だったと思います。


ー監督に就任した際、このチームにどういう変化をつけていこうと考えていましたか?

さまざまな作業をする必要がありましたが、どこかを大きく変えていく時間がなかったので、今あるものをなるべく生かしつつ、修正を加える程度にとどまりました。細かい戦術の部分で少し修正を加えることもありましたけど、特に多く作業したのは気持ちの部分とコンディションの調整です。私が取り組んだことのすべてが結果として表れたわけではありませんが、結果を出せた部分に関しては大きく貢献できたと思っています。

ーメンタル面のアプローチとして、どのような取り組みをしましたか?

日本人の特長として、物事がすごくうまくいっている状態では常に前向きに取り組めるし、怖いもの知らずになると思っています。そうでない場合は本当に真逆で、困難な状況から自分たちの力で抜け出すことにすごく苦しむ。就任した当初の選手たちは、焦っていたり、追い込まれていたりした状態でトレーニングに臨んでいる印象を受けました。そういった状況を分析したことが、どう取り組んだかという答えになると思います。


ーチーム状況が難しい中、第31節のヴィッセル神戸戦では3−0の快勝を収めました。

非常に大きな勝ち点3を得ることができました。振り返ると、残留する上であの勝ち点3がすべてだったと思います。勝ち点3を取れたことは、先ほど話したメンタルの部分にもつながってくると思います。私が日本サッカーを見ている限りでは、「優勝するのではないか」と言われているチームが残留争いに絡むことがよくあり、実際に降格してしまうチームもあります。むしろ、それがない年のほうが珍しいという印象も持っています。こういったことは他の国ではあまり起こらないと思うので、Jリーグの特長も頭の中に入れた状態で作業してきました。あのタイミングで、神戸という強いチームに勝つべくして勝てたのだと思っています。


ーディフェンス面では相手の攻撃陣を完封。そしてオフェンス面でも3得点と結果を残しました。神戸戦が来シーズンのベースとなるのでしょうか?

できることが限られている中でやれることだけをやりきったと、この2カ月を位置づけています。名古屋が今後どういったサッカーをするかは、どういう選手がチームにそろうのかということにも関わってきます。1月から始動して、キャンプやトレーニングを経てカップ戦やリーグ戦が始まっていくわけです。その時にどういう選手が手元にいるかによって、どのようなチームを作るかを考えていかなくてはなりません。もちろん、「こういう選手が必要だ」というリクエストは出しています。戦力がそろって初めて、どういったサッカーができるかという話になってくると思います。




ークラブが取り巻く環境やポテンシャルを鑑みて、グランパスは今後どのようなクラブになっていくと思いますか?

グランパスはJリーグの中でも数チームしかいない大規模なチームだと捉えています。ただ、ほかのチームも勝つためにあらゆることに取り組んでいると思います。そういった意味で、私に求められているのは試合に勝つためにすべてを出せるチームを用意できるか、ということ。そのためにはクラブとして必要な判断、必要な努力をしなければいけません。勝つためには、勇気を持った決断をしかるべきタイミングで取ることができるかどうかも、クラブとして重要なことです。グラウンドの中では、勝てるチームを準備することが私の役割です。そういったことができれば、グランパスには魅力のある未来が待っているんじゃないかなと思います。チームの規模が小さければ取り組めることにも限りがあると思うので、取り組み方次第で大きな夢に向かっていける組織なのかなと。名古屋というクラブに対する理解があるということも、この2カ月間を過ごして得た大事なことです。このクラブでやれることがわかった状態で来シーズンをスタートできるので、この8試合のために来たことは今後につながると考えています。


ー今シーズンのミッションは残留することでした。来シーズンの目標はどのように設定しますか?

高い目標に向かって、高いレベルでやり合えるチームに導くことが自分のミッションだと思っています。「勝ちたい」と言うことは誰にでもできることです。大事なのは、勝つためにどうやって取り組むか。私だけではなく、選手、クラブの全員がやるべきことに全力で取り組むことができるか。それによって、勝利という結果がついてくると思います。そういったことも含めて、クラブ全体を巻き込んでやっていこうと。全員がやるべきことをやれているか、常に自分の立場から見ながらやることが大事だと思います。手元の戦力を踏まえてサッカーのイメージを作り上げるので、1カ月後にこの質問をいただいたらもっと明確に答えられるはずですよ。


ー今シーズンは50万人を超えるグランパスファミリーの方々が来場しました。

就任当初から常に言い続けてきましたが、グランパスは偉大なことを成し遂げられるチームだと位置付けています。いろいろな要素がある中、多くのサポーターの存在はビッグクラブに欠かせない要素です。私が就任してからもスタジアムで多くのファンの方を目にしており、皆さま方には「ありがたい」という言葉に尽きると思います。サポーターの方は結果を求めて応援しています。だからこそ、とてもガッカリした気持ちで今シーズンを終えたことでしょう。「このチームはなにかをしてくれる」というワクワク感や、「大きななにかを勝ち取るんじゃないか」という期待感のあるサッカーを展開することによって、ただ名古屋が好きだから応援に来ているのではなく、スタジアムに足を運んで見に行く価値がある状況に変えていかなくてはいけないと思います。


ー最後にファミリーの皆さんへメッセージをお願いします。

皆さんの喜びや怒りは、我々や選手に向けての「勝たないといけないんだ」というメッセージだと思っています。「頑張ります」や「優勝したいと思います」という軽い言葉だけではなく、実際のプレーや結果で返していきます。今後ともご声援をよろしくお願いします。